能登半島地震、防災対策の権威が語る「反省と教訓」 防災と初動対応が遅れた背景に2つの原因

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――石川県の計画では、約1万5000戸のうち、約8000戸を石川県外の公営住宅によって賄うということになっています。

人々がばらばらになってしまうので良くない。孤立死をもたらすことになりかねない。なるべく多くの人たちがまとまり、お互いにつながり合うことが重要です。

――災害救助法では、被災者への「炊き出しその他による食品の給与」が定められています。今回の地震では、一部の2次避難所で食事の費用を徴収している例があると指摘されています。

これ自体は災害救助法違反です。同法では食事の提供の義務がある。ホテルに収容したらおしまいということではないのです。

――なぜこうしたことが起きているのでしょうか。石川県自体が災害対応に慣れていないということでしょうか。

石川県というよりも、日本の自治体のどこも災害対応に慣れておらず、経験がつながっていないことに原因があります。行政の担当者は2~3年で代わってしまうため、ノウハウと経験が蓄積しない。

石川県も2007年の能登半島地震では素晴らしい対応をしているのに、その対応が今回見られていないというのは、まさに経験を蓄積し、継承するシステムがないことに原因があると言えます。

石川県に、阪神淡路大震災や東日本大震災、中越地震の経験をどれだけしっかり伝えたか、私たち伝える側の責任ももっと問われないといけない。

原子力災害時の体制も抜本見直しを

――今回の地震では原子力発電所の重大事故には至らずに済みました。ただ、原発事故を含む複合災害に発展した場合、あらかじめ定められていた防災計画が機能しなかったのではないかと見られています。

最大級の地震を想定して、原発そのものの防災計画を見直さなければならない。

もう一つの問題は、原子力災害時の避難の問題です。今回の地震では道路があちこちで寸断し、住民の孤立が発生した。道路が使えない前提で避難計画を作らなければならない。

福島原発事故のような最悪の事態に備え、そうしたことが起きた時にどうするのかという前提に立って、対策を講じなければならないと思っています。

――能登半島地震では、ボランティアの受け入れをめぐり賛否の議論が起きました。今行っても迷惑になるという言い方がSNSなどでなされ、行政からも「今はまだ来ないでください」というメッセージが発信されました。

ボランティアは言われてする活動ではないのです。そこに困った人がいれば、迷惑をかけないように最大限の配慮をしながらも、被災者の元に駆けつけなければならない。

ボランティアセンターができたから行きましょうとか、ボランティアは来るなと言われたので行かないというのではなく、そこに支援を求めている人がいるかどうかを判断の基軸にすべきです。

今回のようにボランティアの自主性が失われ、必要なボランティアが被災地に入らないという事態になると、助かる命も助からなくなってしまう。ボランティア側もきちんとリテラシーを持ち、マナーをわきまえたうえで活動すればいいと思います。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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