大量閉店「イトーヨーカドー」どこで間違えたのか 時代の波についていけず、戦略の変更も遅れた

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先ほど見た通り、ヨーカドーもまた、「集中のイトーヨーカドー」と呼ばれるぐらいには、出店地域を絞ってはいた。とはいえ、それはライフほどには徹底されていなかったのである。

イトーヨーカドー
大きな店内だが、大きすぎてスペースが余っており、寂しさを感じさせる店内(筆者撮影)

今回、ヨーカドーが撤退を決めた北海道、そして東北、信越の店舗はまさに、こうしたモータリゼーションの煽りを受けたのであり、その点で「集中」がライフほどにはうまく機能していなかったことがわかるのである。

こう見ていくと、ヨーカドーに足りなかったのは店舗立地戦略の「徹底」だったと思えてくる。

土地のニーズに応えた「ドン・キホーテ」

もう一つ、駅前にも多く店舗を展開して、好調なのがパン・パシフィック・インターナショナルが運営する「ドン・キホーテ」だ。

創業からしばらくはヤンキーたちが集まる怪しげな店、というイメージが強かった同店だが、現在ではユニーをはじめとするさまざまなスーパーを買収して「MEGA ドン・キホーテ」などに変え、32期連続増収を達成している。

ドンキの強みは徹底した「個店主義」で、現場社員に、売り場に関する決定権を与える「権限委譲」を行っている。このやり方で、全国各地、津々浦々でその土地のニーズに見合った店舗空間を誕生させてきた。

実は、ヨーカドーも「新個店主義」を掲げ、「7id」のデータを活用してそれぞれの店舗ごとでの店舗展開を行おうとしている。

しかし、ドンキとヨーカドーではそもそもの社風がまったく異なる。ドンキは創業当時から、創業者の安田隆夫を先頭に、徹底して社員に権限を持たせる社風を築き上げてきた。だからこそ、店舗数が増加した現在でも、「チェーンでありながら、個人経営の商店のようである」というバランスを保っている。

ドン・キホーテ
北海道・苫小牧にある「MEGAドン・キホーテ」はもともと、「ファンタジードーム」というテーマパークだった。柔軟な企業風土が居抜き出店にも表れている(筆者撮影)

一方、ヨーカドーは一般的なチェーンオペレーションを忠実に守ることで利益を伸ばしてきた。つまり、本部のやり方を全国に増やしていくやり方で店舗を拡大してきた。

本部主導、中央集権的なトップダウンの社風を、いきなり草の根的なボトムアップ型の経営にするのは非常に難しいし、おそらくその方向でいっても、ドンキには勝てないだろう。

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