12人ケガ「犬にかまれる事故」年5000件発生の怖さ 「うちの子は大丈夫」という過信は捨てること

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具体的なケースをいくつか挙げてみます。

【ケース1】2017年3月、東京都八王子市の男性宅で、飼われていたゴールデンレトリバーが、男性宅に訪れた生後10カ月の女児に噛み付いた。救急隊が到着したときには、女児は頭から血を流していた状態で、病院へ搬送されたが、約2時間後に死亡が確認された(2019年2月2日の朝日新聞デジタルから)。
【ケース2】2020年3月、富山県富山市の住宅の庭で、生後11カ月の男児がグレートデン2匹に頭をかまれた。病院に運ばれたが、出血性ショックで約2時間後に死亡した。男児は50代の祖父に抱かれた状態で、突然かまれた。犬を押さえようとした祖父も両足にケガをした。犬は、庭で放し飼いにしていた(2020年3月21日の日本経済新聞から)。
【ケース3】2020年5月、千葉県銚子市で飼われていたピットブルが逃げ出し、近所の女性がかまれて全治40日の大ケガを負った。女性が抱いていたトイ・プードルもかまれて死亡した(2020年7月7日のexciteニュースから)。

筆者の知り合いのAさんも2015年にロットワイラーに襲われて、顔を30針以上縫う大ケガを負いました。右目の下から唇までざっくりと裂け、涙腺も噛み切られました。何度も形成手術を繰り返しましたが、完治はしませんでした。Aさんが負った心身の傷は大きく、9年経った今でも、その後遺症に悩まされています。

民法第718条によると、ペットが第三者に損害を負わせた場合、原則として飼い主がその損害を賠償する責任を負います。「相当の注意」をもってペットの管理をしていたことを飼い主が証明できなければ、飼い主はペットの管理に関しての厳しい責任を問われます。

当事者間で円満に解決することはかなり難しく、訴訟で激しく争われる場合も少なくありません。数千万円の賠償が求められる重大事故では、被害者だけでなく、飼い主の人生も変わってしまうのです。

事故の大きさによっては、愛犬を殺処分せざるを得ない状況になることもあります。咬傷事故は皆が不幸になることを、肝に銘じる必要があります。

「うちの子は大丈夫」と過信しない

前述したように、被害者に過失がない限り「自分の責任ではない。犬が勝手にしたことだ」は通用しません。飼い主は「逃げ出す可能性」「襲ってしまう可能性」を考えて、できる限りの対策をしておく必要があります。

筆者も苦い経験がいくつかあります。

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