新銀行東京を引き取る東京TYの思惑とは? 中小企業向け取引で東京都と連携

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「中小企業支援を都内122店舗で行っていく」と語る柿崎昭裕・東京TY社長(写真は2014年6月、撮影:尾形文繁)

東京TYが得られるメリットは東京都との業務連携だ。東京は人口が流入しており、過疎の地域にある地方銀行よりも環境は恵まれているとはいえ、金融機関の競争は熾烈。

今回の統合で東京都が保有する東京TYの普通株式はおそらくせいぜい数%程度で比率は高くはないだろう。しかし、株主となり、また、東京都からは人も受け入れる。東京都の指定金融機関はみずほ銀行だが、今後、制度融資などで東京TYも優先的に扱われるケースが増えてくると考えられる。

また、東京都の中小起業支援策や東京都のプロジェクトに関する情報がほかよりも先に入り、関連する金融取引の獲得に有利に働く。2020年のオリンピック・パラリンピック開催で東京都がかかわるプロジェクトが増える点にも、東京TYは期待している。また、東京都職員約17万人を対象とした住宅ローンなどのローン商品、金融資産運用なども増えるかもしれない。

東京都民銀行はすでに、東京都中小企業振興公社や都立産業技術研究センターとの提携事業を行っている。だが、東京TYの柿崎社長は「東京都が行いたい中小企業支援にかかわる金融サービスを東京TYの都内122店舗に行き渡らせることができる」と語る。

東京TYの課題は都民銀と八千代銀の合併

新銀行東京は規模が小さいため、東京都民銀行か八千代銀行のどちらかとまず合併し、将来は、東京都民銀行と八千代銀行の合併が行われると見られる。

東京TYの課題は、まず傘下の東京都民銀行と八千代銀行の融合が進み、シナジー効果が上がるかどうかだ。東京都民銀行は医療福祉分野向けの融資に強く、中堅企業のM&Aや事業承継にもノウハウがある一方、八千代銀行は不動産関連の融資や取引に強いという得意分野の違いがあり、店舗も重複は10店程度しかない。反面、ビジネスのやり方や文化にも違いがある。

両行は「Club TY」と名づけた共通の金融商品・サービスの提供をするプラットホームを構築中だが、それが上手く機能するかどうか、ゆくゆくはスムーズな合併につなげられるのかどうか、そうした中で、東京都との連携がどれだけビジネス上の利益を生むのかが注目点だ。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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