ヒカキン、文春砲に「シロでも謝罪」の大きな違和感 週刊誌報道、世間の人々、司法の課題と現実

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こちらはA子さんへの疑問と、報じた週刊文春への不信が感じられました。“あっちの方”とは松本人志さんに関する記事のことであり、「不信感として悪い意味で関連付けてしまうよ」という警告のようにも見えます。

8番目のコメントも、

「このタイトルは個人的に悪意があるように感じた。ずっと気になっていたが、仮にクリック数で文春等の執筆側に収益が入るシステムだとしたら、タイトルはどんどん過激になるし、いわゆる釣り記事と呼ばれるような内容や質が低い記事が、今後ますます有象無象に生まれてくるのではないだろうか。yahooニュースも記事をただ掲載するだけじゃなくて、記事の質を上げていくことを今後は進めてほしい(後略)」

週刊文春のみならず週刊誌全体、ひいては、ネット記事全体や配信システムにまで疑いの目が及んでいることを感じさせられました。

当該記事に1000件以上ものコメントが書き込まれる中、上位にこのような声が集中し、多くの「共感した」が押されていたのです。

さらに実業家の三崎優太さんが自身のXにつづった「4年も会ってない元カノに完璧な謝罪するのは変だよね」「これが名誉棄損だって言えない社会の歪みってマジでおかしいと思う」、堀江貴文さんが自身のYouTubeチャンネルで「全然、根拠もない何年も昔の話を今さら奥さんもいるのにあえてこのタイミングで出している」「人のスキャンダル、それもあるようでないスキャンダルを捏造して自分たちの金を稼ぐ。最低だ、お前ら」などと語ったこともネットメディアが報じ、おおむね同意のコメントが寄せられました。

「この記事では読まない」という選択肢

これほど謝罪した当事者への批判が少ない記事も珍しく、だからこそ「なぜこんな内容を報道したのか」「HIKAKINさんがチャンネル総登録者数1200万人超のYouTuberだとしても“有名税”と割り切れるものではない」という論調になっているのでしょう。

結果的にHIKAKINさんが謝罪せざるをえなかったことを疑問視するのは自然な感情であり、「世間の中には冷静にネット記事を見られる人々が増えているのだな」と感じさせられました。

(写真:「HikakinTV」の動画より)

とはいえ、今回の記事を読んで雑誌が売れ、PVが増えたら、発行元の狙い通りになるだけであり変化は望めないでしょう。まずは見る側がその仕組みや、公共性の薄い内容が混在していることを理解し、「この記事では買わない。クリックしない」という選択肢を持つようになること。さらに、報じた側の名誉毀損による損害賠償額を、実情や感情に合わせて適正化することで、「メディア報道を見直してもらう」という時期に来ているのかもしれません。

逆に言えば、「見る側の意識や司法が変わらなければメディア報道は変わらず、ますます生きづらい社会になってしまう危険性が高い」ということ。今回の記事は、HIKAKINさんという有名人の記事である一方で、身近に感じられるエピソードでもあり、自分の人生に重ねて生きづらさを感じ、暗い気持ちになりやすいものでした。

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