米紙の行くべき街に「山口」日本人が知らない魅力 京都を模した街並みと古刹に感じる居心地の良さ

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雪舟と種田山頭火。歴史に名を残した2人の文化人が、自然豊かで文化の香りが色濃いやまぐちの地をこよなく愛したということだ。ちなみに明治40年生まれの詩人・中原中也もこの地の出身。下宇野令村(現・山口市湯田温泉)生まれで、山口中学校(現山口県立山口高校)に通っていた。

一の坂川沿いには気になるカフェや日本茶の店などが点在しているが、訪れた日はいずれも定休日だった。桜の時季にこのあたりで一服しながら景色を眺めるのは最高だろう。

カフェをあきらめてしばらく進むと、「日本一 揚げたてホカホカ 山口名物 全国手造りコロッケコンクール金賞受賞」というコロッケ店(肉屋さん)をみつけた。買い物を終えて出てきた女性に「おいしいんですか」と聞くと「ええ、とっても」と微笑んでいる。これは食べるしかないだろう。

店内のコロッケコーナーには、昭ちゃんコロッケ、ハムコロッケ、牛すじコロッケ、ミンチカツなど揚げ物類がずらり。注文すればその場で揚げてくれる。1個130円の牛すじコロッケを購入し、歩き食い。ほんのり甘く牛すじの香りが口の中で広がる。思わぬめっけ物に遭遇し、得した気分だ。

今回は時間がなくて訪れることができなかったが、一駅隣には約800年の歴史をもつ名湯・湯田温泉がある。中原中也記念館のほか、「狐の足あと」という情報発信スポットがあり、ここでは足湯につかりながら地酒や地元食材を使ったスイーツを楽しめるという。

歴史の舞台になってきた土地

「西の京 やまぐち」を歩き回って感じたのは、室町と明治維新という2つの大きな歴史の舞台になってきた土地がもつ歴史の奥行きの深さと、雪舟や山頭火が愛した素朴で趣のある自然と街並みの居心地の良さ、文化の香りである。

今はまだ観光客が少ないので、そうした街の魅力を静寂な雰囲気のなかで体感できる。SLやまぐち号で津和野まで足を延ばすのもいいかもしれない。大内一族が築いた西の京。ゆっくりと時間をかけて、季節ごとに楽しんでみたい土地である。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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