北朝鮮「3日連続砲撃」に韓国が反応するヤバさ 年明けから朝鮮半島で緊張感が高まっている

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しかし、北朝鮮を囲む強力な隣国や同盟国との関係を長年観察してきたランコフ教授は、「特に台湾侵攻の準備が加速した場合、中国がさらなる問題を引き起こす可能性があるというシグナルをアメリカに送ろうとするシナリオは想像できる」と警告する。

それでもランコフ教授は、「北朝鮮には韓国と対決する理由があり、また静観する理由もあるが、いずれもロシア・中国・北朝鮮の三角関係の状況に大きく影響されるものではない」と考えている。

年明けからいきなり極端な行動には出ない

韓国の政治専門家の多くは今のところ、金正恩体制は中国との貿易の復活や、ロシアとの新たな結びつきによる潜在的な利益を危険にさらしてまで、韓国との対立を一定以上に押し進める準備はまだできていないと考えているようだ。

「『韓国の領土を平和にする』といった厳しいレトリックを掲げてはいるが、金正恩が年明けから核危機を極限まで推し進める可能性は低いだろう」とソウル大学の金教授は語る。

「これは、北朝鮮が米中の覇権争いやロシアとウクライナの戦争によって、自国が有利な立場にあると考えているからだ。また、ロシアへの武器輸出や中国の貿易再開により、景気が上向くことも予想される。そのため、当面は状況を大きく変えるような行動は避けようとするのではないか」。

今年の秋に行われるアメリカの大統領選挙も、金政権の計算の中に入っているかもしれない。「ドナルド・トランプ候補が再選すれば、米朝首脳会談が開かれる可能性が高い」と、ソウル大学の金教授は見る。「それまで待つ、という考えもあるだろう」。

ヘリテージ財団のクリングナー氏も、現時点では「北朝鮮が戦略的な爆発を起こす可能性は低い」と見る。「要するに、ヘルメットをかぶる必要はあるが、机の下に潜り込む必要はまだない」ということだ。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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