「ID.2all」の計器がビートルやゴルフになる理由 フォルクスワーゲン「らしさの追求」がここに

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「ダッシュボードにも、注目してほしいデザインがあります。フォルクスワーゲンがLove Brandになるために重要だと、私が考えていることです」とミント氏。そして「車内に来てください」とつけ加えた。

一緒にID.2allのインテリアコンセプトモデルに乗り込むと、ミント氏はセンターコンソール上に設けられたVW印のダイヤルを回した。するとVWのマークが消え、かわりに城門の上にオオカミが1頭いる絵が現れた。かつて、ビートルのステアリングホイールボスにあったヴォルフスブルクの紋章だ。

計器盤の表示などを変えられるダイヤル。ヴォルフスブルクの紋章が現れている(写真:Volkswagen AG)
計器盤の表示などを変えられるダイヤルを回すとヴォルフスブルクの紋章が現れる(写真:Volkswagen AG)

同時にドライバー正面のデジタル計器盤に、当時のビートルを思わせる速度計を中心とした図案が出現。もう一度、ミント氏がダイヤルを回すと、ビートル風の計器が今度はゴルフのそれに変わった。

初代ビートルを思わせるデザインの表示(写真:Volkswagen AG)
初代ビートルを思わせるデザインの表示(写真:Volkswagen AG)
1980年代のゴルフ2のような表示を選ぶことも可能(写真:Volkswagen AG)
ゴルフのような表示を選ぶことも可能(写真:Volkswagen AG)

「こういう遊び心を私はシークレットソースと呼んでいて、これらを随所に盛り込んでいきたいと思っています」とニヤリと笑いながらミント氏。

「ライカブル(好かれること)、ステイブル(走りのよさを感じさせること)、そしてシークレットソース。3つのピラーがLove Brandになるために重要なことだと考えています」

本当のフォルクスワーゲンがここにある

そういうわけでフォルクスワーゲンは、大人が4人で乗れて荷物をたくさん積めて、一充電で450km走れて、従来のフォルクスワーゲン車のように、生活のなかに溶け込める……、そんなクルマをID.2allで実現しようとしているのだ。それが理解できた。

これ、ほかのメーカーではなかなかやっていない。私が「半年に1台は新車を出さないと市場で忘れられてしまうという危機感を表明するメーカーもありますが……」と言うと、ミント氏は「それは大丈夫。むしろフォルクスワーゲンらしさを失ったときのほうが危機です」と答えたのだった。

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正式発表は2025年で、ヨーロッパでの発売は2026年から。価格は2万5000ユーロ以下と発表されている。

「フォルクスワーゲンはピープルズカー、『誰もが乗れるクルマ』という意味ですから」と、デザイナーのワトラ氏がつけ加えたのも、私の印象に強く残った。

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小川 フミオ モータージャーナリスト

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おがわ ふみお / Fumio Ogawa

慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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