2024年の日経平均の上値は3万6000円で問題ない 国内はDX投資が活発、アメリカの景気も軟着陸

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ところでなぜ筆者が日銀短観をこれほど重視するかといえば、それは日銀短観における大企業全産業というくくりが、TOPIX(東証株価指数)構成銘柄と近い属性であるからだ。

その大企業全産業の業況判断DIはプラス21と前回調査対比4パーセントポイント上昇し、2018年12月調査以来の高水準に到達した。またTOPIXの予想EPSと密接に連動する売上高経常利益率の年度計画も9.14%へと上昇し、企業収益のさらなる改善を示唆した。

前回調査対比でアメリカ経済の減速が想定以下だったことや、自動車生産の回復を起点とする生産活動の持ち直しが持続したこと、そして円安による業績カサ上げ効果が効いたとみられる。こうした大企業の良好な景況感に鑑みると、少なくとも12月までの企業収益は順調であると考えられ、このまま大きな変化がなければ、来年5月の決算発表で好調な実績値が示されるだろう。

なお、日銀短観の調査方法は、前月からの変化を問うPMIなどと異なり比較時点を問わない形式である。企業は回答にあたって自社の収益計画を基準にしていると考えられ、それを満たしていれば「良い」「さほど良くない」「悪い」の三択から「良い」を選択するはずである。したがって業況判断DIの改善は業績上方修正の余地と考えることができる。短観とアナリスト予想の方向感が一致するのはそうした背景があるからであろう。

アメリカの金融緩和転換による追い風の内容とは

またアメリカの金融緩和も日本株の追い風になろう。12月FOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)は予想通り政策金利の据え置きを決定し、FF金利(誘導目標幅上限)を5.50%で据え置いた。注目されていた物価見通しとドットチャート(アメリカ政策金利の分布図)およびジェローム・パウエルFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)議長の記者会見は、市場参加者の予想対比でハト派であった。

FOMCの情報を消化した金融市場では、2024年の利下げが一気に現実味を帯びている。筆者は5月か6月、FOMCを念頭に年央の利下げ開始を予想、その後も断続的な利下げを実施し、2024年末までに4.5%かそれ以下への到達を見込んでいるが、3月に利下げ開始があってもまったく不思議ではない状況になりつつある。

インフレ率の見通しに目を向けると、2023年(前年第4四半期比)のPCE(個人消費支出)デフレーターはプラス2.8%とされ、9月時点のプラス3.3%から大幅に引き下げられた。

2024年についてもプラス2.4%、2025年はプラス2.1%と全体的に下方修正され、2026年にプラス2.0%に落ち着く姿となった。過去数カ月のインフレ率低下を映じて発射台(2023年値)が大きく低下したことで2024年以降のインフレ率低下に対する確度を高めた格好だ。

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