アフリカで爆売れスマホ「世界5位に躍進」の衝撃 スマホ市場が縮小する中でなぜ伸びているのか

拡大
縮小

売上高におけるアフリカ市場の比率は2019年度の75%から2022年度に44%まで低下し、製品のポートフォリオも変化した。

伝音のフィーチャーフォンも含めた携帯電話の出荷台数は2021年時点で世界3位だったが、スマートフォンのシェアでは6位以下にとどまっていた。

それが、南米をはじめとする中国以外の市場の急成長で、IDCによると2023年4~6月のグローバルでのスマホのシェア(出荷台数ベース)で、初めてトップ5に名を連ねた。 しかも市場が前年同期比で7.8%縮小し、トップ5のうち4社がマイナスとなる中、伝音だけが同34.1%増と大きく成長した。伝音は同7~9月のシェアでも5位に入った。

新興国での勝負がカギ

市場調査会社のCounterpointは、2023年の世界のスマートフォン出荷台数が前年比5%減り、この約10年間の最低水準まで落ち込むと予測するが 、地域別にみると北米と欧州は低迷が続く一方、中国や中東、アフリカ、インドなどの新興市場は成長基調に戻ると分析している。

コロナ禍の逆風を耐え忍んだ伝音にとって、これからがスマートフォン市場の収穫期とも言え、主戦場のアフリカ市場は、2023年7~9月の出荷台数が前年同期比12%増の1790万台に達し、目覚ましい伸びを見せている。

Counterpointによると、電力不足で計画停電が続く南アフリカで、停電中に多様な使い方ができるスマートフォンへの買い替えが加速し、前年の輸入規制で落ち込んだエジプトでも、市場の回復が進んでいるという。

ただ、「アフリカの王」の地位も盤石ではない。中国に1990年代に進出し20年かけてカフェ市場を耕したスターバックスが、市場が十分に大きくなった時に現地企業のluckin coffee(瑞幸珈琲)の猛攻を受けたように、アフリカのスマートフォン市場には続々と中国企業が参入する。サムスン、OPPO、ファーウェイも入り乱れ、数少ない成長市場の奪い合いになっている。

ローエンドからの脱却に向け、伝音は今年2月末にバルセロナで開かれたモバイルワールドコングレス(MWC2023)に初めて参加し、折りたたみスマートフォンを発表した。アフリカより消費力が強く、シャオミが長年首位に立つインドに投入する。

本拠地でシェアを守りながら、サムスンやシャオミが強い他の新興国市場でシェアを奪えるかが、今後のカギとなりそうだ。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

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うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
Twitter: @sanadi37

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