脱毛サロン「銀座カラー」破産に追い込まれた裏側 美容関連の「前金ビジネス」の倒産が相次ぐ

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「銀座カラー」を展開するエム・シーネットワークスジャパンのTSR REPORT(信用調査報告書)を抜粋したもの(画像:東京商工リサーチ)

「所見」には、「2022年4月期末時点で50店舗あったが、2023年4月期末時点で31店舗まで減少」と、直近1年間の大幅な店舗リストラを指摘している。

また、2022年4月期以降の財務諸表は取材で入手されておらず、TSR REPORTに添付されていない。東京商工リサーチ(TSR)への取材対応を含めて公開性が大幅に低下し、意図的な忌避も伺える。

こうしたことからエム・シーネットワークスジャパンの信用力が大きく毀損していることは与信業界では広く認識されていた。ただ、信用情報は一般には公開されない。公開を求める声もあるが、信用調査は会員向けの有料サービスで、また機微情報の安易な公開は事業価値の毀損に繋がりかねず扱いは慎重さが求められる。

繰り返される前金ビジネスの倒産劇

過度に前金に依存した資金繰りが破たんし、顧客を巻き込み社会問題化したケースはこれまでも後を絶たない。

2023年は特に同様のケースが目立つ。エム・シーネットワークスジャパンと同じ大手脱毛サロンとして知られた「C3」の運営会社であるビューティースリー(江東区)や、男性専門脱毛サロン「ウルフクリニック」の経営に携わっていたTBI(東京都港区)、「東京プラス歯科矯正歯科」のクリニック名でマウスピース矯正を手掛けていた友伸會(豊島区)など、美容関連の「前金ビジネス」の倒産が相次いでいる。

これら倒産劇には、コロナ禍という特殊要因が少なからず関係している。だが、サービスの利用者確保には自ずと限度があり、コロナ禍でなくてもいずれは拡大策に限界が訪れるのは自明の理だったはずだ。

前金ビジネスは美容関連だけにとどまらないが、美容業界では特に、若者を中心に多数の被害者を生む悲劇が幾度となく繰り返されてきた。それでもなくならないのは、あくなき美への追求という永遠の憧れがある。

消費者心理に便乗した前金ビジネスに危うさがあることは否めない。消費者保護の観点から、一般個人を対象として長期の前受金を前提とするサービスや製品の場合は、企業側の決算公告義務を厳格化するなどの対応も必要だ。

原田 三寛 東京商工リサーチ情報本部情報部長

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はらだ みつひろ / Mitsuhiro Harada

東京商工リサーチ情報本部情報部長、信用情報誌「TSR情報」編集長。帝京大学元非常勤講師。

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