エンジン出力のすごみだけでなく、電子制御エアサスペンションを用いることにより、しなやかな乗り心地を提供したのも初代シーマの特徴であった。エアサスペンションとは、空気圧を金属バネに替えて衝撃吸収に用いる方式で、空気圧を変えることにより柔らかくも硬くも調節できる。走行状況に応じて、コンピューター制御で空気圧を最適化し、走行安定性と快適性を両立し、優れた乗り心地をつねに維持する技術として、1980年代に日産以外でも各社で開発が進められた。
室内では、ハンドル中央のホーンボタンのところにオーディオの操作ができるスイッチが並べられ、これをいつでも操作できるようにと、ホーンボタンはハンドル操作に合わせて回転することなく、外側のハンドルだけがスポークとともにまわる独特な手法であったことも、シーマを運転した印象のひとつとして今も記憶に残る。
座席は、ふっくらとした厚みのある形をしたクッションで、居間のソファーを思わせ、贅沢な気分を見た目にももたらしていた。柔らかく体を受け止めるその座り心地は、いまなお体に蘇ってくる。
豪勢な雰囲気と、ターボエンジンの荒々しい全開加速との落差もまた、初代シーマの懐かしい思い出のひとつである。
爆発的なヒットで社会現象に
発売開始の初年で3万6400台が売れ、月平均すると3000台超えの数字となり、バブル景気を象徴する“高級”の代名詞となる。その人気ぶりから「シーマ現象」という言葉も生まれた。好景気を背景に、シーマのような高級車をはじめ、ほかの高級品が度を越して売れる姿を指す言葉として、シーマ現象は使われた。
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