カプコン、「ヒット作の不在」に打つ手はあるか 辻本春弘社長に今後の戦略を聞く

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2014年9月に開催された東京ゲームショウ
多くの人気ゲームタイトルを展開するカプコン。2014年10月に「Newニンテンドー3DS」と同時に発売された3DS向けソフト「モンスターハンター4G」は、発売後5日で200万本を突破した。「モンハン」の累計販売本数は3200万本を超え、2004年の発売から大ヒットシリーズに成長している。
しかし、モバイルゲームの苦戦などを受けてここ数年の業績は伸び悩んでいた。そうした中、創業者の辻本憲三会長が「社内のチーム編成をやり直す。外注丸投げではダメ」と宣言。積極的に活用してきた海外開発会社との取引を大幅に縮小するなど、2年前から構造改革を推し進めている。
2015年3月期は売上高が前期比37.1%減の642億円へと激減したものの、不採算タイトルの絞り込みや外注費の削減が効き、営業利益は2.7%増の106億円に踏みとどまった。利益はゆるやかな回復傾向だが、「モンハン」「バイオハザード」といった定番タイトル以外でめぼしいヒットが出てきていないという悩みも抱える。
激変するゲーム業界をどう見ているのか。辻本春弘・社長兼COO(最高執行責任者)に聞いた。

 

――スマートフォンゲーム市場が成熟化する中、ヒットを出せていない。

ヒットを出したいが、思ったようにいかないのがビジネスのさが。われわれは、ゲーム専用機やPC、スマホなどマルチプラットフォーム戦略でやっているが、どうしても得手不得手が出てくる。ただ、得意なところを削ってまで不得意なところへリソースを割り振るのかというと、そうもいかない。

スマホゲームは焦らずに戦略的ポートフォリオを考えながら辛抱強くやっていく。場合によってはゲーム専用機のノウハウをスマホゲーム側の開発・運営に利用できる可能性もある。経験やリソースを共有するなど、地道な努力を続ければヒットにつながる可能性もある。

――年内に新作スマホゲームで「モンスターハンターエクスプローラー」のリリースを予定している。本命タイトルだけに、ヒットを狙っているのか。

大きな期待を持つと計画に対するボラティリティが出てくる。自分たちとしては(スマホゲームで)成功していないので、計画はある一定のところに抑えている。ただ、モンハンのエクスプローラーは完全に内製で進めており、開発ノウハウが蓄積されてきている。

もっともっと経験を積む

――スマホゲーム開発の難しさとは?

家庭用、業務用ともにずっとゲーム専用機の開発をしてきた。スマホは汎用デバイスなので操作方法が限られている。移動中にゲームをする場合も多く、バッテリーやメモリの容量、通信速度に制限がある。こうした条件下で面白いものを提供する必要がある。もっともっと経験を積まないといけないのが実情だ。

――任天堂のDeNAとの提携をどう見ているのか。

任天堂さんは自社のハードでしかゲームソフトを動かせない。これから進出しなければならない新興国のゲーム市場を考えると、海賊版の問題も出てくる。ならば今は収益が上がらなくても、自社のゲームソフトの認知度向上にスマートデバイスを活用するのは、1つのマーケティングでありプロモーションになる。次の施策に向けた対応であることがよく分かる。

われわれは任天堂さんとは違うやり方で、ワンコンテンツ・マルチユースの戦略を考えている。ハードが普及していない地域では、映像やキャラクタービジネスなどゲーム以外でユーザーへ訴求していく。

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