産後うつを経験した4児の母の"天職" 子だくさんワーキングマザーの仕事論<3>

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その後、吉田さんはインストラクター業を続けながら、第3子、第4子と産み育ててゆく。

その間、夫のライフスタイルにも変化があった。次女出産の際には、有給をつなぎ合わせて10日間の育休を取得。さらに大学に通う生活が始まったことで帰宅時間も早まり、休日は家族の食事を献立から考えて料理するなど劇的に変化。夫婦の間に信頼感が生まれた。

「最近でこそ、マドレボニータの知名度が上がって徐々に状況が変わってきましたが、会社勤めを続けていたほうが収入面はよかったと思います。でも、私は17時以降には仕事をしない働き方を選びたいし、PTAにも参加したい。子どもたちに塾を強制するより、娘たちみんなと家族そろって夕ご飯を食べる幸せを大切にしたいんです」

自分が救われたことで得た力を還元したい

家族が増えるたび、家事と育児にかかる時間や労力は増すばかりの怒濤の日々を、どうにかやりくりして夫と恊働しながら乗り越えてきた。そして今年、ついに長女が中学校に入学した。

「今は上の2人が家事を手伝ってくれたり、下の子たちの面倒を見てくれているから、気持ちは少し楽ですね。4人でケンカもしますが、中学生の長女が2歳の4女とよく遊んでくれるなあと、ありがたくて。育児に関しては特に心配せず、親の責任を感じすぎず、娘たちの生きる力に任せたい。彼女たちと、本音で話せる関係性を築きたいと願っています」

吉田さんは今日も朝4時に起きると、集客と自身の心の整理のためのブログ執筆作業にとりかかる。発信内容は、日本の母子健康において産後女性に対するケアが不足していること。いわゆる“産褥期”を書き続けることが、ライフワークとなった。4月には、マドレボニータ代表の吉岡マコさんと『産褥記 産んだらなんとかなりませんから!』を上梓したところだ。

自身の生き方と仕事が一体化したような人生を歩む彼女が、子育てに追われつつも働き続ける理由とは―。

「産後ケアの仕事にいちばん救われているのは、実は私自身なんです。いまだに、産後うつで自殺した人の報道に触れるたびに『あれは、私だったかもしれない』と思ってしまう。これはもうミッションだと感じています」

吉田さんのモチベーションになっているのは、仕事をすることで自分が救われているという意識。そして、かつての自分と同じように、今、苦しんでいる人たちを救いたいという思いだ。

「10年後には、上の子2人は成人、下の2人は10代です。私は54歳。まだインストラクターを続けていられたらいいですね。かつて、人生に対するビジョンがまったく見えなかった私も、この先の人生を少しずつ見据え始めています。産後の心身の変化について学生たちに教えるなど、知識と情報を提供しつつ、不安を取りのぞくことで背中を押せたらと思っています」

谷畑 まゆみ フリーランス エディター&ライター

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たにはた まゆみ

女性誌やWebメディアで編集や執筆を手がけるフリーランサー。目白大学大学院心理学研究科現代心理学専攻修士課程修了。日本心理学会、日本社会心理学会会員、産業カウンセラー、手相アナリスト。働く女性向けのファッション誌で、30代女性のライフスタイルを掘り下げる連載を6年間担当して以来、「女性の生き方」の企画がライフワークに。

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