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早すぎた黒田前総裁の「履歴書」、鮮烈な原点とは 異次元緩和を生み出した金融政策「万能論」

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今日は何を書いているのか――と11月中、金融関係者の注目を集めた全29回の連載。読みどころは肝心の日銀総裁時代ではない部分にあった。

黒田東彦日銀総裁
退任後、政策研究大学院大学の特任教授に就いた黒田氏(在任中の総裁会見、撮影:今井康一)

黒田東彦前日銀総裁が『日本経済新聞』「私の履歴書」に登場し、11月末に最終回を迎えた。

2023年4月に総裁を退任後、わずか数カ月で「履歴書」に登場したことに、金融関係者からは驚きの声が上がった。金融政策の影響は長く残り、「黒田時代の手腕が問われるのはこれから」(日銀OB)となる面もあるからだ。筋論としては「沈黙を守って歴史の審判に委ねるべき」(同)との声も聞かれる。

一方で、日銀ウォッチャーとしては、黒田氏の金融政策を万能視する歪んだ思想が形成された手掛かりを知るうえで、「履歴書」は興味深いものであった。

英国留学で感銘を受けた経済学者の教え

金融政策の有効性は限定的で、景気循環の波を多少ならす程度だ。また、壮大なバブルが崩壊して「流動性の罠」に陥ると、ゼロ金利制約に直面してほぼ不能となる。

しかし黒田氏は、金融政策に限界はなく、デフレも容易に打破できる対象とみなした。そうした万能論の原点は「履歴書」の第7回「英国留学」にうかがえる。

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