近づく金融政策決定会合、交錯する観測、方針を先取りする報道、そして振れるマーケット。事前報道の背景に、理想からかけ離れた中央銀行の姿が浮かび上がる。
1998年春、改正日銀法(新法)が施行され、日銀は法的に独立した。当時、ある有力幹部はこう力説した。「君らのようなBOJウォッチャーは撲滅されるだろう」と。
「BOJウォッチャー」とは、記者やアナリストなど日銀(Bank of Japan)の金融政策の予想に関わる職業で、その仕事は早晩なくなるのだという。聞きながら、私は「そうなったら(もともと行きたかった)運動部への異動を希望しよう」と考えたことが思い出される。
「ウォッチャー」撲滅は、以下の理由による。
経済指標の動きから政策変更がわかるはずだった
新法によって、金融政策の透明性は飛躍的に高まる。旧法時代、金融政策の変更は政策委員会の臨時開催で決定されたが、新法下では日程は事前に決まり、タイミングの不透明性はない。政策委員会の討議内容も開示される。情勢分析や政策判断の裏付けも詳細に公表される。
「経済指標をみていれば、政策変更は事前にわかり、もはや金融政策はニュースにならない」ことになる。
専門的な言葉を使うと、中央銀行がどの金融・経済指標を重視し、その指標群がどう変化すると金融政策が動くのか、という「政策反応関数」がクリアになるわけだ。金融政策が動く「プログラム」があり、これに重視する指標群の数値を入れ込むと、金融政策の変更が機械的にわかる、というイメージだ。
新法で透明性を高めた日銀が十分な情報発信を行えば、確かにウォッチャーはもはや必要とされない世界になる。
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