築180年、英で現役「川底の鉄道トンネル」の秘密 列車運休し徒歩見学会、SL時代の面影も残る
ところが、その予想は見事に裏切られた。約400mの川底トンネルのうち、ロザーハイズ駅とそれに隣接するブルネル博物館の直下部分だけは、歴史保護の見地から19世紀に造られた煉瓦組みが見えるように残されているものの、それ以外の部分は1990年代の改装の折、徹底的な防水加工を施し、その上にコンクリートを吹き付けた。歴史的経緯を知らずにトンネル内に入ったら「近年になって造られたのではないか」と思うくらいに手が入っている。
トンネルは2つの管が並行して掘られている、と筆者は思い込んでいた。ところが、入ってみると2つの管の間は60もの”横穴アーチ”が組まれており、反対側の線路も覗き込むことができる。アーチが小刻みに造られているため、チャリティーツアーに同行した女性運転士に「トンネル内で対向列車が来たらライトが点滅し、前が見にくくないか?」と尋ねたところ、「運転台が壁側(左側通行の左側)にあるので、まったく影響はない」と説明してくれた。
現役運転士も感慨深げ
建設当初の長さは366m、駅との接続部分を含めると400mあまりのテムズトンネルは電車の運転士から見てどうなのだろうか。ツアーを共にした女性運転士に話を聞いてみた。
ロザーハイズ―ワッピング間のダイヤ上の所要時間は40秒程度だという。しかしトンネル内部は常に真っ暗で「トンネル内はヘッドライトだけを頼りに走るのがつらいと感じることもある」と話していた。また、実際にトンネルを自身の足で歩くのは初めてだったそうで「(大英帝国が華やかし頃の)ビクトリア女王時代の遺構がこの目で見られるとは思わなかった」と感慨深そうだった。
参加料の多寡はともかく、長い歴史を誇る鉄道構造物に触れる体験を提供することは鉄道会社としては決して簡単ではないだろう。普段入れないトンネル内を運転士らが嬉々として歩く姿は筆者の心を強く打った。関係者にとっても「この機会は貴重だ」と思わせる何かを見ることがこの先もあるだろうか。今回の見学会を成功に導いた人々に感謝すると共に、さらなる”すごいもの”が見られるチャンスを楽しみに待ちたい。
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