英ヴァージンも参戦?「英仏国際列車」が大激戦に 30年間独占の「ユーロスター」に競合が続々
これで3社もの会社がイギリス―欧州大陸間の列車運行へ名乗りを上げた形となったが、11月20日、今度は思わぬところからニュースが飛び込んできた。スイス国鉄の国際旅客輸送部門の責任者であるフィリップ・メーダー氏が、イタリアのパルマで開かれたシンポジウムの席上で、ロンドンへの直通列車の運行を検討していると語ったのだ。
スイスは現在、欧州の10カ国・約120都市と列車で直結しているが、鉄道の需要が年々拡大していることから、さらなる運行地域拡大を計画している。これまでもハンブルクやウィーンなど、鉄道で移動するにはやや時間のかかる都市であっても利用者数が多い路線があり、フランスとスイスを結ぶ高速列車TGVは最大で1日1万8000席を提供してきた。イタリア方面も、ジェノヴァやボローニャへ延長運転を開始し、いずれも滑り出しは好調だ。また、チューリヒからローマやバルセロナへは、まもなく夜行列車の運行を開始する予定だが、これらはかつて利用者数の低迷で廃止された列車が復活する形となる。
競合で鉄道活性化なるか?
そして今回、メーダー氏は「ヨーロッパ地域で最も忙しい都市」ロンドンへの直通運転について検討していることを認めた。もっとも、このプロジェクトは容易なものではなく、線路使用料が高額なことはもちろん、先のレポートでも触れた出入国管理の問題など課題は多く、あくまで検討段階に過ぎない。ただ、バーゼル―ロンドン間は5時間程度で結ぶことが可能であり、まったく非現実的な話ではない。機が熟せば、両国間を結ぶ高速列車の実現もそう遠い先の話ではないだろう。
欧州各国の新興旅客鉄道会社の同盟であるオールレイル(AllRail)社の会長エーリッヒ・フォルスター氏は、イタリアの事例を挙げつつ、この一連の動きを大いに歓迎している。イタリアでは、民間の列車運行事業者NTV社が参入し、高速列車「イタロ」の運行を開始したことで旧国鉄系のトレニタリアとの競争が活発化し、国内の鉄道需要が大幅に増加。航空や自家用車などから旅客が転移し、都市間輸送の勢力図が完全に塗り替わった。


また、3社が競合するスペインの高速列車も、各社とも順調に業績を伸ばし、鉄道の需要そのものが大幅に拡大している。はたして北西ヨーロッパの高速列車にも同様の未来が待ち受けているのだろうか。環境問題への関心の高まりから鉄道への注目が高まる欧州だが、ますます目が離せない状況となってきた。

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