英ヴァージンも参戦?「英仏国際列車」が大激戦に 30年間独占の「ユーロスター」に競合が続々

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現時点ではあくまでテレグラフ紙が報じただけに過ぎず、ヴァージングループの広報担当も「噂や臆測に対してコメントをすることはない」と述べている。レコード会社に始まり、航空業界やフィットネスクラブ、通信事業に果ては宇宙旅行と、あらゆる事業を手掛けてきた野心家のブランソン氏だが、鉄道事業については不本意な形での撤退を余儀なくされ、そのことを今も快く思ってないと言われている。そう考えると、このまま黙って鉄道業界から身を引くとも思えず、今後の動向が注目を集めそうだ。

一方、ヴァージングループ参入の報道とほぼ時を同じくして、オランダを拠点とするヒューロトレイン(Heurotrain)社が、アムステルダムを起点にロンドン、ブリュッセル、パリとの間を結ぶ高速列車の運行を計画していることを明かした。

同社は、オランダの起業家マールテン・ファン・デン・ビゲラール氏と、その息子のレーマー氏によって率いられ、アメリカやスイスの投資会社から支援を受けているという。運営の中枢にオランダ鉄道(NS)の元取締役を抜擢したのをはじめ、運行を予定している各国の鉄道会社に在籍した経験を持つ専門家を引き抜くなど、人事面でもすでに動きを見せている。

鉄道同士の乗客争奪戦にはならない?

同社の計画ルートはイギリスと欧州大陸間だけでなく、ユーロスターと合併した高速鉄道「タリス」のフランスとベルギー、オランダ、ドイツを結ぶ路線のうち、ドイツ方面を除く全方面と競合しており、運行が実現すればユーロスターの強力なライバルとなることは間違いない。

タリス ユーロスター
吸収合併によりユーロスターブランドとなった旧「タリス」の列車(撮影:橋爪智之)
旧タリス車両 ユーロスターロゴ
「ユーロスター」のロゴが入った旧「タリス」の列車(撮影:橋爪智之)

だが、同社の分析では鉄道会社同士による乗客の奪い合いになるのではなく、ほかの交通機関から旅客が鉄道へシフトすることにより、鉄道全体の需要が45%増加することになると試算している。オランダのマーケティング会社マーヴェルテスト(Marveltest)社の調査結果によると、ヨーロッパに居住する人たちの50%以上は、2時間以内の移動には環境に優しい鉄道を選択すると回答しており、利便性や利用機会(運行本数)の増加により、さらなる需要拡大を期待できる。現在、ユーロスター1社独占となっている4都市間の列車は、時間帯や曜日によってほぼ100%に近い列車が満席となっており、需要拡大は十分期待できる。

Heurotrain社は、まだ具体的なことについて公表はできないとしつつ、公正で透明性のある価格設定とするとしており、財政的な負担を増やす恐れのあるいたずらな低価格競争をすることはないと示唆している。一方で、座席やインターネットなどサービス面においては、最新かつ最高水準のものを目指すと付け加えている。

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