令和の今でも「大奥」ドラマ化され続ける深い意味 刑事ものや医療ものに匹敵する鉄板コンテンツ

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テレビ局の『大奥』頼りはいまにはじまったことではなく、昔からドラマ化されやすい題材だった。いまでは信じられないかもしれないが、フジテレビが時代劇を定期的に作っていた。そのなかで『大奥』は何度も制作されてきた。

まずはぐっと遡って、1960年代。1968年に関西テレビが東映と共同制作しフジテレビ系で放送された。これが、これまで男性のものだった時代劇をはじめて女性主体にしたとの見方もある。が、前年の1967年にも『徳川の夫人たち』という佐久間良子主演で大奥のドラマ(原作:吉屋信子)がNETで放送されていて、当時から大奥ものは人気コンテンツであったのだ。

岸田今日子の「ささやきナレーション」が話題に

次の『大奥』は、1980年代。1983年、再び、関西テレビと東映の制作で、フジテレビ系放送の『大奥』が1年間放送された。256年もの長きにわたった徳川幕府と、共に歩んだ大奥の誕生から終焉までを、女性たちの愛憎劇として描き、栗原小巻が主演した。

ナレーションが印象的で、ムーミンの声もやっていた名優・岸田今日子が担当した。岸田の耳に残るウィスパーボイスが大奥の秘密めいたムードを高め評判になった。余談ながら、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年)の長澤まさみのささやきナレーションは岸田今日子ナレーションのオマージュなのではないだろうか。

1983年といえば、朝ドラ『おしん』と大河ドラマ『徳川家康』が大人気だった年。その2年後に、男女雇用機会均等法が制定される。労働省ではすでに1982年、均等法の制定に向けて男女平等法制化準備室を設置していた。つまり、1983年にも、女性の地位向上の動きが着々と進行していたのである。女性のための時代劇・大奥が放送され人気を博したのは、時代の機運に乗ったともいえそうだ。

その影響かはわからないが、NHKは1989年の大河ドラマで、3代将軍の乳母で大奥を仕切る春日局の生涯を描く『春日局』を橋田壽賀子の脚本、大原麗子主演で制作し、高視聴率を獲得(ただ初回はお正月も手伝って低視聴率だったことはレジェンドになっている)。

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