残念ながら、一番効果の低い勉強法―「ノートを読み返す」「教科書を再読する」――こそ、手をつけやすいので最もよく利用されています。内容について考え、関連づけながら、同時に深い集中力を保ってノートを読み返すことは、単純に難しいのです。事実、再読してもおおむね、あまり記憶の役には立たないことが実験で明らかになっています。
精神的負荷がかかると記憶力が向上する
心理学者のエイミー・カレンダーとマーク・マクダニエルは、大学生を対象に教科書を2000語分か、または科学誌『サイエンティフィック・アメリカン』の論文を読ませました。学生たちには、後で小テストか要約の作成によって、どれだけ理解および記憶しているかを確かめると伝えました。教科書を1回だけ読ませた学生もいれば、2回読ませた学生もいました。しかし、おおむね2回読むことに効果はみられませんでした。
私が一部の勉強法を利用しないでと強く言うのは、時間の使い方としてよいと言えないからです。情報を記憶に定着させる一番の方法は、それが何を意味するのかを考え、自分が学習するあらゆる情報と意味をもとに結びつけることです。
内容を理解するには、それがどのように構成されているかを理解する必要があります。そして、内容がどのように構成されているかを理解するには、それが何を意味しているのかを理解する必要があります。記憶にとって重要になるのは精神的負荷のかかる作業をすることであって、その作業から学びを得たいと思っているかどうかは関係ありません。
私の授業を受ける学生で学習に苦労している学生は、試験の準備をするころにやっと、その内容の意味について考え、構成をつかみ、理解の穴を埋める作業に取りかかろうとします。それでは取り返しがつかないほど遅いのです。
それより、理解の助けになる、精神的負荷のかかる活動をしておくと、勉強のための活動にもなりますから、試験が近づくころには、覚える必要のある情報がだいたい頭に入っているでしょう。情報が頭に入っているのは、最も強力な勉強法の1つ、想起練習を活かせているからにほかなりません。
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