伊藤忠がビッグモーター買収!?火中の栗拾う理由 「創業家の切り離し条件」24年春までに買収判断

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一方、ビッグモーターはほぼ全国に店舗を持ち顧客との接点も多い。整備工場の設備も比較的新しい。ビッグモーターの事業と伊藤忠グループの自動車関連事業は親和性が高く、シナジー(相乗効果)がそれなりに見込めると伊藤忠側は判断したようだ。

伊藤忠商事をはじめとする総合商社は資源市況の高止まりや円安効果により業績は好調、2024年3月期の業績予想も上方修正が相次いでいた。伊藤忠商事も11月6日に通期純利益予想を7800億円から8000億円に引き上げたばかりだった。潤沢な資金を背景に、各社は有望な成長投資先を模索している。

ただ、伊藤忠には厳しい投資基準があり、投資額に見合う成長が厳格に求められる。今年8月に発表した、子会社・伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の完全子会社化案件ですら「浮かんでは消え、消えては浮かんだ案件」(鉢村剛CFO)だったという。

買収価格は極めて厳しいものになる

急転直下で浮上した今回の案件は相乗効果がわかりやすい一方、伊藤忠商事から提示される買収価格はビッグモーターにとって、極めて厳しいものになるだろう。

前述のように伊藤忠側は、創業家からの経営切り離しを支援の条件としており、創業家がビッグモーター株の100%を握る資本構成も今後、大きな論点になる。会社分割でビッグモーターを解体し、創業家から切り離された優良資産だけ伊藤忠が買い取っていく可能性もある。

ビッグモーター再建の道筋は、新たな局面に入った。

森 創一郎 東洋経済 記者

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もり そういちろう / Soichiro Mori

1972年東京生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科修了。出版社、雑誌社、フリー記者を経て2006年から北海道放送記者。2020年7月から東洋経済記者。

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