ヒルトンの「旅館見下し動画」大炎上も当然の理由 有名ブランドが比較広告を出す危うさ
では、どうした広告表現であれば、受け入れられたのだろう。1つ考えられるのは、企業側が判断基準を提示するのではなく、消費者にジャッジを委ねる形だ。両社のメリット・デメリットを、なるべくフラットに示し、客観的に判断してもらう。そこで軍配が上がれば、こっちのものだ。
消費者を巻き込んだ議論で、参考になるのが「きのこたけのこ論争」だ。明治のクッキーチョコレート「きのこの山」と「たけのこの里」、どちらが好きかをめぐるバトルである。こちらは、競合企業ではなく、同一企業のライバル商品の対決だが、ネットの世界では「長年の因縁」となっている。消費者の「こっちが好き」という自由な感想が、対立構図として可視化される。いまや企業側も目をつけて、プロモーションに活用している。
日本市場に向けての宣伝戦略であれば、ライバル企業と手を組んで、「宿泊業界全体を盛り上げていこう」とコラボレーションするのも一考だっただろう。コロナ禍で観光業界が大打撃を受けたのは、誰しも知っている。「企業の垣根を超えて」的な浪花節を打てば、それなりに好意的に受け止められたはずだ。
業種と、広告の種類の相性の悪さ
それでもなお、「挑戦状的な比較広告」にこだわるのであれば、旅館業界という大きな主語で相手にするのではなく、ペプシのように特定の企業を「ねらい撃ち」するほかない。とはいえ、たとえば「星野リゾート」にケンカを売ったところで、おそらく乗ってくることはないだろう。
そもそも、どちらも「悪名は無名に勝る」タイプの業種ではない。おそらくヒルトンに対しても、これまで一点の曇りもない「上品」なイメージをもっていた人々は多いはずだ。今回の動画で「旅館への不満をスカッとさせてくれた。ヒルトン最高!」と思う人も少しはいるかもしれないが、それ以上にネガティブイメージを与えた感は否めない。
使い古されすぎた表現だが、高級ホテルの顧客ニーズは「ナンバーワン」より「オンリーワン」と呼ぶのがしっくりくる。それをヒルトン自身も理解していたからこそ、「とまるところで、旅は変わる。」のキャッチフレーズを採用したのだろう。
考えれば考えるほど、コンラッドのようにラグジュアリー性の強いブランドと、比較広告の相性の悪さが気になる。プロモーション展開を考えるうえで、「たちどまる」ことはできなかったのだろうか。
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