「すぐ消える芸人」と「天才芸人」は本質的に同じだ 藤子不二雄A『まんが道』のようなM-1誕生秘話

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本書は、新しい商品、それも文化イベントというユニークな商品の開発ストーリーとして秀逸だが、やはりそれだけではない。

笑いという、摩訶不思議な現象をつくりだすクリエイターたち、彼らをサポートする裏方たちの人間ドラマがまた面白い。その意味で本書の後半の主役はやはり漫才師たちである。

M-1第1回のシーンを読んでいると、私もリアルタイムで観ていたことを思い出して昂揚した。ああ、あの夜、トップバッターの中川家が最後まで最高得点を守り通したよなあ、と記憶が蘇ってくる。

そこで思いついて、本書の第1回決勝のシーンを読むのと並行してM-1第1回の映像を動画配信で観ることにした。

そうすると改めて舞台裏のドラマがよりリアルに見て取れて、非常に面白い。いわばM-1のBehind the scenes(舞台裏) コンテンツとしての読み方である。舞台上の漫才師の心理を想像しながら、審査員のひとことの重みを感じながら、改めて深く大会を楽しむことができる。

お笑いはもっとビジネス的に分析されていい

この業界を呼ぶときの、「お笑い」という呼び名自体に、「肩肘張って真面目に論じるほどの対象ではなく、せいぜい肩の力を抜いてつきあってほしい」というような含意があるだろう。

そんな界隈についての本を、経営学的にどうとか言って批評すること自体、野暮の極みである。そのことを承知しつつも、このエンターテインメント産業の中でもユニークな業界の繁栄は、やはりもっとビジネス的に分析されるべき対象だろうと考える。

コロナ禍で長く社会的活動が抑制されていた時期に、多くの消費者は娯楽を求めてネット配信を視聴する習慣を確立した。

それからまた社会が元に復しつつあるにしても、この習慣は最早、廃れそうには見えない。そのくらい人は切実に笑いを必要としていたのだ。実は笑いはそのくらい、消費者のQOLを高めうる、生活の必需品だったのである。

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