CESやSXSWを目指し変貌を図る自動車ショーの姿 ジャパンモビリティショー2023が見せたもの

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最初の週末の来場者の印象をSNSなどで見てみると、「2023年の東京モーターショー」として見に行った人が多いようで、コンセプトカーやコンパニオンの写真が目についた。一方で、ライブステージの様子を報告している人もいた。

スモールモビリティやドローンなどをSNSにアップしていた人は、それに比べると少なかったようだが、これはカーメーカーやアーティストの知名度が高いことが理由だろうし、ビジネスシーンでは注目を集めているかもしれない。

これが「カーメーカーが選んだ道」

重要なのは、これらがJMSという「1つのイベントの中に収まっている」ことだ。ライブを観にきた人が他の展示棟に足を運んで、新しいモビリティを目にして興味を抱くというストーリーが生まれる可能性がある。

その意味では、たしかにエレクトロニクスという大枠の中でクルマも家電もITもありというCESや、オースティンのダウンタウンにあるカフェやバーを会場に仕立て、インタラクティブをテーマに掲げたSXSWに近い。

ホンダのブースでは、夢見るモビリティを入力するとAIが設計図を生成する体験型コンテンツを実施(筆者撮影)
ホンダのブースでは、夢見るモビリティを入力するとAIが設計図を生成する体験型コンテンツを実施(筆者撮影)

「クルマ以外に興味はないから、それ以外の展示はやめてほしい」と思った人もいるだろう。しかし、JMSは主催する自工会自身が、従来型のモーターショーでは成立が難しいと思ったから、JMSになったことを忘れてはいけない。

自工会はカーメーカーの業界団体だ。つまりこれが、「カーメーカーが選んだ道」なのである。

「商談の場」でもあるスタートアップのゾーン。こうした企業が出展できる場でもある(筆者撮影)
「商談の場」でもあるスタートアップのゾーン。こうした企業が出展できる場でもある(筆者撮影)

個人的には、百貨店が厳しい状況に置かれていることを思い出した。買い物に出かける人がいなくなったわけではなく、アウトレットモールや道の駅は賑わっている。それだけ消費者の嗜好が変わった、と考えるのが自然かもしれない。

とりわけマイクロモビリティは、マーケットが新しい分個性的なデザインやエンジニアリングが多いし、乗ってみればまさに身体の延長と言いたくなるサイズ感や動きから、これはこれで操る歓びを感じるという人もいるはず。筆者もその1人であるので、JMSに行く人は時間があれば試してみてほしい。

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森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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