「円安アレルギー」はアメリカの首を絞める

「反為替操作策」のTPPへの影響は?

それ以上に深刻な問題は、TPA法案に為替操作を防ぐ条項を加えたら、ほかの国々が通商交渉から離脱する可能性があることだ。米政府に言わせれば、為替介入をなくすという目的のためだけに、太平洋の市場を米国の商品やサービスに向けて開放するというはるかに重要な努力を犠牲にすることになる。

結局米国労働者を苦しめることになる?

ブッシュ政権で財務次官補を務め、現在はメリーランド大学で教えるフィリップ・スウェーゲルは、中国やマレーシアなどは自国通貨の価値を歪めるような為替介入を行っており、結局は米国の労働者を苦しめることになると指摘する。ただし、貿易交渉はそうした複雑な経済問題を主張する場ではないとも語る。

「それぞれの国が、自分たちがふさわしいと思う通貨政策を運営できる。ほかの国の通貨政策を指図するために通商協定を利用するのは、おかしなことだろう」

ルー財務長官は政治的な軋轢を弱めるために、外交努力によって、為替操作に関する規定は不要になるとも説明している。中国の人民元は、2010年に中国政府が規制を緩和して以来、対ドルで30%近く上昇している。対米貿易黒字は、オバマ政権発足前は中国経済の10%相当だったが、2014年は2%まで縮小した。財務省高官によると、日本は1991年から376回、為替市場に介入したが、2011年以降は露骨な介入を控えている。

もっとも、為替操作に反発する議員や輸出産業、米経済の慢性的な貿易赤字を懸念するエコノミストたちは納得しない。

2009~2011年にジョー・バイデン米副大統領の首席経済顧問を務めたジャレド・バーンスタインは、アジア諸国の為替介入の規模は縮小しているというオバマ政権の主張は認めたうえで、次のように語る。「ただし、安心はしていない。晴れているからといって、傘を捨てたりはしない」

(執筆:JONATHAN WEISMAN、翻訳:矢羽野薫)
© 2015 New York Times News Service

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