高島屋、「シンガポールの成功」をどう生かす 木本茂社長に海外戦略を聞く

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タイでは、民間による不動産開発として最大規模(商業面積12万平方メートル)となる商業施設「ICONSIAM」の中核テナントとして、百貨店を出店する。現地パートナーからラブコールを頂いて出店するという経緯もあり、賃料などの条件が良い。タイも開業から数年内で黒字化を想定している。

──だが、上海店は苦戦している。

きもと・しげる●1956年生まれ。1979年横浜高島屋(現高島屋)入社。新宿店長などを経て、2014年から現職。

2012年末にオープンした当初は、尖閣問題で大規模な反日デモが起きた後で、十分な告知ができなかった。来店客は1日3000人と惨憺たる状況だったが、現在は1万人程度まで増えた。2014年度の売り上げは前期比で2割増の63億円。営業損益は20億円の赤字だった。

ただ、店舗近隣にある地下鉄に加えて、2017年にもう一路線が開通する計画で、交通アクセスの改善が見込める。鈍化したとはいえ、中国経済は成長を続けている。2022年頃をメドに黒字化することが目標だ。

 ──日本市場の展望は?

2年後に消費税が8%から10%へ引き上げられた場合、2017~2019年の3年間合計で、当社の売り上げへのマイナス影響は3.4%と厳しく見積もっている。

カギを握る日本橋再開発

われわれとしては、2019年春に開業を予定する日本橋再開発や、海外事業の成長などでカバーする計画だ。(三井不動産と共同で行う)日本橋再開発では、既存の高島屋日本橋店の隣地にオフィスや商業施設を含む複合施設が加わり、当社の売り場面積も既存の5万平方メートルから6.2万平方メートルに拡大する。

一方、構造改革にも取り組む。2019年度までに自然減により人員を500名圧縮する。また駐車場の運営などの外注費を見直し、合計で140億円の経費削減を見込んでいる。

ーー銀座でも大規模再開発が進んでいる。お客さんがそちらに吸収されてしまう懸念は?

湾岸地区でタワーマンションが続々と建設されていることもあり、銀座、日本橋がある中央区は、東京23区の中で最も人口の伸び率が高い。(コレド日本橋に加えて)コレド室町の開業で日本橋全体の”競争力”も上がっている。銀座と日本橋を回遊する人の流れも出来ており、一緒に盛り上がっていければよい。

(撮影:風間仁一郎)

「週刊東洋経済」2015年5月23日号<18日発売>「この人に聞く」を加筆)

藤尾 明彦 東洋経済 記者

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ふじお あきひこ / Akihiko Fujio

『週刊東洋経済』、『会社四季報オンライン』、『会社四季報』等の編集を経て、現在『東洋経済オンライン』編集部。健康オタクでランニングが趣味。心身統一合気道初段。

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