「本社」から「新規事業」が育たない納得の理由 イノベーションが生まれる場所を図で考える

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たとえば「明治維新」。起こったのは、江戸から遠く離れた九州・四国の地であり、そこは幕府の考え方や体制からも遠く離れたところでした。

あるいは「産業革命」。起こったのは欧州大陸の中心から離れた島国のイギリスでした。絢爛豪華なお城を作って競っていたフランスやドイツの国々とは、文化的背景も大きく異なっている地です。

もうほとんど見る事はなくなりましたが、「VHSのカセット」もそうですね。かつてはVHS・β戦争とも呼ばれた競争がありました。パナソニック陣営(VHS)とソニー陣営(β)のデファクトスタンダードをめぐる戦いがあったのです。結果的にVHS陣営が勝ったのですが、このVHSが開発されたのは、パナソニックの子会社だった日本ビクター(現、JVCケンウッド)でした。そして、創り出したのは、リストラされそうだったエンジニア達でした。

写真×エンターテインメントの「プリクラ」もそうでしょう。プリクラを開発した女性は、元々の勤務先はリクルートでした。たまたま営業のために訪問したアトラスの社長に誘われて入社し、ビデオプリンターからプリクラを着想したのです。

これらの事例を書き込んだのが下の図です。

(著者作成)

もちろん、企業の中心の一丁目一番地である本社で計画され、その後成功する新事業もあるでしょう。しかし新規事業の立ち上げにおいては、企業や業界の常識に縛られず、また、既存勢力に邪魔されないよう、一定の距離を確保するほうがうまくいくと思います。

均衡と不均衡

シュンペーターは、イノベーションは「均衡から不均衡が生まれる過程」だと言いました。一方、別の経済学者のイスラエル・M・カーズナーは、イノベーションは逆に、「不均衡から均衡が生まれてくる過程」だと捉えます。

いずれの場合でも、その過程では、新旧のコンフリクトが起きます。それゆえ、新しい不均衡が生まれるにしても均衡から離れたところが最適、新しい均衡が生まれるにしても、不均衡から多少離れた場所のほうが安全です。

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