JR九州「ひこぼしライン」には誰が乗っているのか 「日田彦山線BRT」、実際に乗車して確かめた

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工事は2020年8月に開始され、JR九州は専用道化に約26億円を投じ、それと別に、福岡県が流失した鉄橋2か所の架け替え費用を出している。整備が進捗した2022年になると、路線名や愛称、開業時期、駅の設置計画や導入車両が発表されている。正式な路線名は日田彦山線BRT。それと併せて「BRTひこぼしライン」の愛称が付けられた。沿線地域の想いを乗せ、未来に向け駆け抜けていく「日田"彦"山線の"星"」となる――との願いを込めた。バスは中型ディーゼル車「いすゞERGAmio」2台と、EVバスにおいては世界最大手となる中国BYDの小型電気バス「J6」4台で、それぞれ異なる車体色で個性を持たせている。

駅数は、地域に密着させるため11カ所増やして36駅となる。運行パターンは、添田―日田間の通し運転が10往復、それに朝と夕夜間、添田―彦山間3往復、筑前岩屋―日田間2往復があって上下計30便。鉄道時代の1.5倍の本数が設定された。各便には愛称名が付けられ、全線便は「ひこぼし1〜20号」、筑前岩屋折り返し便は「ひこぼし101〜104号」、彦山折り返し便は「ひこぼし111〜116号」として区別する。運賃は鉄道時代と同額で、前後の鉄道区間には未導入のICカード「SUGOCA」も導入した。

釈迦岳トンネルを出た日田行きが交換の添田行きが待つ筑前岩屋駅に進入。差し掛かる橋は左側の沢からの土石流により鉄橋が流され完全な新設となった(写真:久保田 敦)

開業記念式は営業開始の前日、8月27日に福岡・大分県境で専用道区間と一般道区間の接点の宝珠山駅にて行われた。じつは直前の7月上旬、またもの記録的大雨で6月に完成した筑前岩屋駅付近の専用道が一部崩落する被害が出たが、試乗会などをキャンセルして修復工事を行い、予定どおりの開業を迎えたものだった。式には福岡・大分両県知事、沿線市町村長、JR九州社長に、豊田俊郎国土交通副大臣(当時)も列席し、同氏は「利便性向上の工夫がされた日田彦山線BRTひこぼしラインが地域に愛され持続可能な公共交通機関となることを期待する」と述べている。営業開始日の28日は最も早い筑前岩屋5時52分発日田行きで一番バス出発式が行われたほか、添田駅、日田駅でも駅長による出発合図によって始発便が発車した。

目立つカメラ片手の乗客や地元グループの試乗

日田―添田間を乗った「ひこぼし4号」の乗客は、日田発7時20分の時点で4人だった。日田に来る往路の便が通学便の1本のために中型車が充てられているが、添田行きだけの様子を見るとその理由は謎となる。日田駅で乗車券購入に迷っていた年嵩の女性2人は添田まで乗り通す乗客だった。それにカメラ片手のビジネスマン1人と私。日田行き2本目の「ひこぼし1号」とは夜明までの国道386号を走行中、北友田で出会った。これも中型バスで、「利用が多いのは日田着8時3分の便」と運転手の言どおり高校生が乗っていた。

夜明で加わった男性もカメラを持っていた。久留米6時43分発の列車からの乗り継ぎだろうか。

次に乗客が加わったのは大行司。土地の男性1人。そして専用道区間唯一の新設駅深倉で杖をついた女性、歓遊舎ひこさんの1つ手前の貴船口で男性。これで最大人数となった。深倉の女性は畑川(医院前)で降車して、そのままクリニックの玄関に入っていった。

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