オランダ・ベルギー、苦難の末に新型国際列車始動 以前の高速列車は1カ月で頓挫、今回は大丈夫?

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困ったのはオランダ・ベルギーの両鉄道だ。ダイヤ改正を行って運行を開始したばかりの列車が不具合でまさかの運行停止。しかもその列車の最高時速250kmに合わせてダイヤを組んでいたため、ほかの車両で代走させようにも新ダイヤに合わせた運行が可能な高速列車を急に調達することは不可能だ。

結局、従来の車両を使って運行するダイヤを組み直したが、ダイヤ改正によってほかの路線へ転用された車両をすぐに呼び戻すことは難しく、オーストリアなど他国で余剰となっていた客車をかき集めることを余儀なくされた。

FYRA 客車列車
高速列車V250が運行停止となったため代替で運用された客車の「フィラ」(撮影:橋爪智之)
FYRA客車列車 ロッテルダム駅
ロッテルダムに到着した客車による代走の「フィラ」(撮影:橋爪智之)

最終的に、フィラのプロジェクトは中止となり、V250はすべてメーカーへ返却され、メーカーは各鉄道へ和解金を支払うことで解決した。だが、両国間を結ぶ鉄道アクセスの課題は何も解決していなかった。呼び戻された客車は古く、機関車も含め最高時速は160kmであったため、高速新線経由でも大幅な時間短縮とはならなかった。

オランダ鉄道はこのプロジェクトに懲りたのか、後に発表された中長期計画の中で「より現実的な最高時速200kmの車両による、オランダ―ベルギー間のアクセス向上を目指す」と計画の修正を認めた。

今回の新型車両は「堅実設計」

このような紆余曲折を経て、最終的にアルストムが「より現実的な」次世代型インターシティ用車両の契約を勝ち取った。同社の汎用型プラットフォームであるコラディア・ストリームは、相互運用性の技術仕様(TSI)に準拠するもので、オランダ国内向け仕様とベルギー乗り入れ仕様をそれぞれ受注することになった。

新型車両のICNGBは8両編成で構成され、計画ではアムステルダム―ブリュッセル間を1日16往復、所要約2時間で結ぶ予定だ。

ICNGB
オランダの新型車両ICNGB(撮影:橋爪智之)

一方で、この新しい列車はオランダとベルギーの主要都市間の接続を強化することが目的となっているため、現在運行されている列車の停車駅のうち、ブレダ(Breda)、ノーデルケンペン(Noorderkempen)、アントウェルペン・ベルヘム(Antwerpen Berchem)、メヘレン(Mechelen)、ブリュッセル空港(Brussels Airport Zaventem)、ブリュッセル北駅(Brussels North)、ブリュッセル中央駅(Brussels Central)については通過となり、タリスと同じ停車駅となる見込みだ。

また、これらの新しい列車の終着駅は、従来のアムステルダム中央駅ではなく、アムステルダム南(ザウドZuid)駅となる予定だ。現在、南駅をアムステルダムの新たな主要駅とするべく工事が行われており、将来的には全ての長距離国際列車、高速列車は中央駅に停車した後、そのまま南駅まで直通することになる。

一方、これまで両国間の列車が停車していた前述の各駅は利便性が損なわれるため、新たにこれらの中間駅に停車するロッテルダム―ブリュッセル間の列車も、同様に16往復が設定される。2025年には、タリスを含めたオランダ―ブリュッセル間の接続は、1日47往復の列車が設定される予定だ。

ICNGBはすでにオランダ国内では運行を開始し、今のところは大きな問題もなく運行が続けられている。はたして、今回こそは問題なく、新しい国際列車の運行が開始されることになるだろうか。

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橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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