オランダ・ベルギー、苦難の末に新型国際列車始動 以前の高速列車は1カ月で頓挫、今回は大丈夫?

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両国は1957年に運行を開始した国際特急TEEの最初の運行区間にも含まれ、1996年にタリスが運行を開始するまで最優等列車として両国間を結んだ。もちろん優等列車以外にも、途中駅に停車する「ベネルクストレイン」と呼ばれる特別料金不要の快速列車が設定され、地域間を利用する人たちも支えた。

タリスPBKA
フランス―ベルギー―オランダ間を結ぶ高速列車タリス(撮影:橋爪智之)
ベネルクストレイン
オランダ―ベルギー間を結んだベネルクストレイン(撮影:橋爪智之)

転機が訪れたのは2004年。最高時速250kmでアムステルダム―ブリュッセル間を結ぶ新たな列車「FYRA(フィラ)」の運行を開始することが発表されたのだ。高性能な新型車両を開発して従来の機関車牽引の客車列車を置き換え、高速化による大幅な所要時間短縮を図る計画だった。車両の開発・製造は、イタリアのアンサルドブレダ(現日立レール)が勝ち取った。

V250と称する新型車両は最高時速250kmで、時速300kmのタリスには一歩劣るが、分散動力方式の採用により加減速性能を向上。国際列車用の車両らしく、両国の3種類の電化方式に対応した構造となった。車内設備では、従来の列車と異なり飲み物や軽食が買えるバー車両を連結。車体デザインには自動車のデザインで有名なイタリアのピニンファリーナを起用するなど、意欲的な車両となった。

FYRA V250
トラブル頻発で短命に終わった高速列車「フィラ」のV250(撮影:橋爪智之)

期待の新型は1カ月で運行停止

ところが、新型車両は一向に納品されなかった。ヨーロッパでは、新型車の認可取得が遅れて納品期限に間に合わないということがしばし起こるが、このV250もご多聞に漏れず、完成はしたもののなかなか営業運転にこぎつけることができなかった。また、インフラ側についても、新路線のカギとなる信号システムETCSレベル2の導入が遅れたことで、さらなる遅延を招いた。

2012年9月から試走を兼ねた営業運転を徐々に開始し、同年12月の冬ダイヤ改正からようやく正式に運行開始することができたが、いざ走り始めると車両の不具合が頻発した。不具合は、寒冷地対策に対する不備が大半を占め、警笛内が凍結して鳴らないといったお粗末なものから、床下に付着した氷柱が落下して床下機器を損傷したり、防護カバーが外れて線路上に落下したりといった重大なトラブルまでさまざまだった。

結局、V250は運行開始後わずか1カ月で運行停止命令が下され、その後二度と本線上を営業運転で走ることはなかった。

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