欧米諸国「ハマスを見誤っていた」という大後悔 ガザ地区の安定を保つのが優先と油断していた

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ハマスが「『すべての民間人は兵士である』と言ったとき、これはレトリックではなく、イスラエル国内のイスラエル人コミュニティの脆弱性を示すものだった」(アビネリ)。その代わり、軍はヨルダン川西岸地区での個人テロに、政府は物議を醸す司法改革の取り組みに集中していた、と同氏は語る。

多くのパレスチナ人にとって、ハマスとは、はるかに優勢なイスラエル軍に抵抗するための唯一の手段ーー自爆テロやテロ行為ーーを用いてイスラエル占領に抵抗する軍事組織である。

国際社会はどう反応するのか

イスラエル人にとって、ハマスの残忍さは1990年代から2000年代初頭にかけての自爆テロ作戦から明らかであり、「ガザは、一方的な撤退とパレスチナ支配への信頼の危険性を一言で言い表すものだ」とサックスは言う。

今後の展開は、ハマスが防衛態勢を整える時間があったガザという狭い空間で、避けられない民間人の死に対して国際社会がどう反応するかかかっている。

また、2006年のようにヒズボラがレバノンから戦闘に参加するかどうかにも大きく左右されるだろう。当時イスラエルがヒズボラを慎重に痛めつけようと尽力した結果、今回は双方とも関与に限界があるとする見方がほとんどだ。

ヒズボラの指導者であるハッサン・ナスララは、2006年のイスラエルへの攻撃を後悔していると伝えられているが、イランによってはるかに洗練されたロケット弾も装備されており、相互に抑止力があると見られている。

しかし、アミドラーの言う通りであれば、イスラエルは欧米の意見や批判をほとんど気にすることなく、ハマスとの戦争を追求するだろう。「ハマスがイスラエルを攻撃できるほど強くなるのを許せるのは、これが最後だ」。

イスラエルがハマスの壊滅に成功すれば、「本当の試練があったとき、イスラエルは代償を払う用意があり、戦う用意があり、違いを生み出す用意があることを示すだろう。サウジアラビアだけでなく、中東のすべての人々からもっと評価されるようになると思う。イスラエルの反応が十分でなければ、中東での支持を失うかもしれない」。

(執筆:Steven Erlanger記者)

(C)2023 The New York Times

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