なぜ小田急が?「ご近所向けSNS」開発の舞台裏 「回覧板」の負担軽減、沿線飛び出し全国拡大

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秦野市の後も導入は広がり、2022年には小田急沿線の神奈川県川崎市麻生区で実証実験を開始。同年度には東京都から「町会・自治会への地域交流アプリの導入支援事業」を受託し、世田谷区、町田市でも展開している。

小田急の東海林氏
「いちのいち」の機能について連携協定締結式の場で説明する東海林氏(記者撮影)

沿線外にも使用例は広がり、2023年3月には京都市と小田急が「いちのいち」を地域活性化に活用することで連携協定を締結。同年5月には総務省の「自治会等における地域活動のデジタル化実証事業」に採用され、北海道から沖縄県まで全国9道府県の10市町村で利用が始まった。これらとは別に各地の自治会から利用の申し込みもあるといい、現在は全国約600自治会、ユーザー数は数万人まで増えた。

自治会向けは負担少なく

「いちのいち」の自治会・町内会向けの利用料金は、機能の多い「プレミアム」でも300世帯につき月5000円で、無料プランもある。ビジネスとして成り立つのか気になるところだが、東海林氏によると「自治会向けのプランは会費などで賄えるように負担を抑えた事業設計にしているが、行政(自治体)向けのプランは全て有償、別料金で個別見積もりのため、しっかり営業収益は上がっている」と説明する。

「いちのいち」アプリのイメージ
スマートフォンに表示した「いちのいち」の画面(記者撮影)

小田急線に乗ったことがない人も多いであろう地域でも採用が増える「いちのいち」。沿線に根差して展開してきた大手私鉄がこのようなサービスを展開する意義について、東海林氏は「私鉄は地域の方々やコミュニティとともに歩んできた歴史がある。(このようなサービスも)地域にどう価値を提供するかという点には変わりなく、その姿勢自体は小田急のあるべき姿だと思う」と語る。

ニッチな分野ながら行政なども注目する「ご近所SNS」。私鉄がリアルの世界で進めてきた「地域活性化」を、デジタルの世界でも展開できるか。

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小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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