スイス「世界最長トンネル」脱線事故が示す教訓 存続の旧線が「代替ルート」として効果発揮
ただし、旅客列車はゴッタルドベーストンネルを走行する際、非常時の避難経路としてもう一方のトンネルを使用することになっているため、1本のトンネルしか通行できない現段階での運行は不可能という理由で、旧線経由での運行が続いている。また、一部の貨物列車についても、運行本数に制限がある東側トンネル経由ではなく旧線経由で運行している。
SBBによると年内のトンネル開通は困難で、2024年初頭の限定開通を見込んでいる。
「代替ルート」の重要性
事故が発生したゴッタルドベーストンネルは2016年に開業したが、峠を越える旧線もそのまま残されている。旧線沿線にある村へのアクセス維持はもちろんのことだが、最大の理由は何らかの問題が発生してトンネルが使用不能となった際の代替ルートを確保することであった。
トンネルの開業後7年目にして、早くもその代替ルートとしての役割を果たすことになったのは残念なことだが、こうした問題は事故だけではなく、土砂崩れといった自然災害など回避できない事象も考えられ、世界中の鉄道で常にリスクとして存在する。旅客列車は旧線経由となって所要時間は1時間以上延びているが、それでも乗り換えなしで直通する列車を確保できているのは代替ルートが機能している証しで、リスクマネジメントをきちんとしてきた結果と言えよう。
対照的に、8月27日に発生したフランス東部の地滑りで不通となったイタリア―フランス間を結ぶ主要鉄道ルート「モン・スニトンネル」は、代替ルートもなく、少なくとも2カ月は閉鎖されるとみられる。
同様に被害を受けた国道と高速道路は、まもなくトラックの通行が再開される予定だが、両国を結ぶ鉄道による旅客および貨物輸送は当面ストップする。ビジネス需要が多いトリノ―リヨン間は、今後数カ月は9時間もかかるスイス経由とならざるをえないだろう。地元の反対などで建設が進んでいなかった、同区間の新たなルートである新モン・スニトンネルは2032年の完成を目指して準備を進めているが、今回の地滑りを受けて、早急に建設する必要があるとの声が上がっている。
今回の事故を受け、改めて代替ルートの重要性がクローズアップされている。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら