スイス「世界最長トンネル」脱線事故が示す教訓 存続の旧線が「代替ルート」として効果発揮

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脱線したのは30両編成の貨物列車で、イタリア国内の5カ所から集積した貨車を連ねて走行中だった。途中、イタリア・スイス国境に位置するキアッソ駅での点検時はとくに異常はなく、列車はそのまま発車したが、ゴッタルドベーストンネル手前のティチーノ州南部で、対向列車の運転士が貨車から煙が上がっているのを発見した。

近くのベリンツォーナ駅に臨時停車して確認をしたところ、ブレーキが解除されない状態のまま、車輪とブレーキパッドが擦れた状態で走行していたことが判明。当該貨車のブレーキを解除し、問題はないとして運行を再開した。その後、トンネルの手前に設置している列車の状態をモニタリングする自動監視装置を通過した際も、とくに異常は見られなかったという。

ゴッタルドベーストンネル 脱線
トンネル内で脱線し横転した貨物列車(写真:スイス連邦鉄道 © SBB CFF FFS)

現在、スイス安全調査局(SUST)とティチーノ州検察局は、事故原因の調査を続けている。このブレーキ故障があった貨車と、事故の因果関係については不明で、現段階では事故の詳しい原因はわかっていない。

線路8kmと枕木2万本の交換が必要

スイス連邦鉄道(SBB)によると、トンネル事故による損害は当初の見積もりよりもはるかに大きく、8kmにわたる線路と2万本の枕木を交換する必要があるといわれており、これらの大規模な補修には少なくとも数カ月を要する見込みとなっている。また、大きく歪んだ安全扉の画像も公開された。

ゴッタルドベーストンネル 事故内部
脱線事故で破損した安全扉(黄色の部分)(写真:スイス連邦鉄道 © SBB CFF FFS)

事故現場の復旧作業は捜査当局の調査完了後に着手したが、脱線して激しく損傷した貨車が16両も現場に取り残されており、まずはこれらを取り除く作業から開始しなければならなかった。狭いトンネル内で大型の重機を使うことができないため、損傷した貨車を細かく切断し、少しずつ外へ運び出すという気の遠くなるような作業が行われている。また、事故現場の写真を確認すると、貨車に積み込まれていた食品などの大量の積載物が線路内に散乱しており、これらが復旧作業の大きな妨げになっている様子がうかがえる。

安全扉に関しては、とりあえず仮設のものを設置して東側のトンネルは使用できるようになり、当面は1日当たり上下計100本程度の貨物列車を交互通行させながら運行している。

ゴッタルド旧線 俯瞰写真
代替ルートとなっているゴッタルド旧線。旅客列車のほか一部の貨物列車も迂回運行している(撮影:橋爪智之)
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