アメリカでもインフレ高進によって実質可処分所得がトレンドを大きく下回っているが、アメリカの家計は貯蓄率を低下させ、消費水準をある程度維持している。その結果、コロナ禍で行われた財政政策の効果や行動制限による消費抑制で積み上がった「強制貯蓄」はほとんどなくなってしまったという見方が多い。
日本でも実質可処分所得が目減りした状態が続いているが、消費が抑制されて黒字率(貯蓄率)が維持されていることから、「強制貯蓄」は取り崩されるどころか、さらに積み上がっている。
「強制貯蓄」はむしろ積み上がっている
日銀が2021年4月の展望レポート(BOX3)で公表した「強制貯蓄」の推計方法を用いて、直近2023年4〜6月期まで延長推計すると、「強制貯蓄」(特別定額給付金から貯蓄に回った部分を除く)は2023年4〜6月期に約1兆円増加し、2020年4〜6月期以降の3年強で累計約50兆円となった。
日銀は2023年7月の展望レポートで「個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、行動制限下で積み上がってきた貯蓄にも支えられたペントアップ需要の顕在化に加え、賃金上昇率の高まりなどを背景としたマインドの改善などに支えられて、緩やかな増加を続けるとみられる」と指摘し、「強制貯蓄」が取り崩されることで消費が拡大することへの期待を示したが、実際には取り崩されていない。
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