ウォール街に跋扈する"吸血鬼"の正体

クルーグマン教授が米金融業界に喝!

では、時に「大きすぎて潰せない」という言い方で単純化されすぎる金融界の構造問題についてはどうか。ここでもドッド・フランク法は実質的な成果を生んでいるようだ。それも同法の支持者の多くの期待を上回るほどに。

そもそも「大きすぎて潰せない」という言い方では片付けられない問題なのだ。致命的だったのは、規模と複雑性の間に相互作用が生じたことだ。

それでも吸血鬼たちは反撃

金融機関は、銀行の部分、ヘッジファンドの部分、保険会社の部分などなど、複数の部分からなる怪獣キメラと化していた。そのような複雑性ゆえに規制を回避しながら、結局は目論見どおりに行かなかったときに救済してもらえた。この両方が成立したため米国は災難を被るという展開になった。

そこでドッド・フランク法は「システム上重要な」金融機関に対して特段の規制を実施できるようにした。危機時には規制機関がそういう金融機関をただ救済するのではなく、管理下に置けるようにしたのだ。

さらに同法は金融機関全般に対し、資本の積み増しを義務づけた。これにより過剰なリスクを取る意欲を減退させるとともに、リスクの負担から破綻へと至る可能性を減らした。

こうしたことのすべてが功を奏してきたようなのだ。銀行類似の規制を回避しながら銀行類似のリスクを生み出した「シャドーバンキング」は影を潜めようとしている。一例を挙げるなら、製造会社から金融の策士へと変身したゼネラル・エレクトリック(GE)も、今では本業に立ち戻ろうとしている。

全般的にも従来型の金融業、つまり強めの規制を受けるような金融業が復活してきた。規制を逃れることの魅力は以前より薄れてきたようだ。

それでも吸血鬼たちは反撃に出ている。

さて私はなぜ彼らを吸血鬼と呼ぶのか。決して彼らが米経済の生き血を吸うからではない(実際に吸っているとはいえ)。米国のような大きすぎ・報酬高すぎの金融業界が経済成長と安定を損なうということを示す証拠は豊富だ。IMF(国際通貨基金)もそれには賛同している。

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