キヤノン、新取締役候補にみえる体制変化の兆し 初の「女性取締役誕生」に社内取締役の若返り
このうち大和AMは、2022年の時点ですでに女性取締役が不在なら反対票を投じるという基準を設定していた。ただ昨年は、「取締役の多様性確保に向けた積極的な取り組み」を認め、御手洗氏再任に賛成票を投じていた。それが今年は、基準への抵触を理由に反対した。
「機関投資家の動きを的確にとらえて対策をしなかったのは大きな反省だ」。7月末に開催された決算説明会では、CFO(最高財務責任者)の田中稔三氏がそう悔い改めていた。伊藤氏の招へいは「株主のノー」に対する答えとなる。
新たな社内取締役は20歳ほど年下
注目点の2つ目が社内取締役の若返りだ。これまでキヤノンの社内取締役については、「高齢化」が指摘されてきた。
経営トップの御手洗氏は、9月23日に88歳と満年齢で米寿を迎える。CFOの田中氏(82)、CTO(最高技術責任者)の本間利夫氏(74)を合わせた社内取締役3人の平均年齢は81歳だ。取締役在任の年数も長い。御手洗氏が42年、田中氏と本間氏は20年を超える。
もちろん、高齢だから悪いというわけではない。御手洗氏の強力なリーダーシップのもと、事務機・カメラという従来の主力事業が縮小する中で事業改革を進め、業績は好調だ。しかし、後継者の育成といった観点から、不安視する声が上がっているのも事実だ。
今回、社内取締役の候補として挙げられたのは、現在執行役員の3人。アメリカの子会社社長の小川一登氏、半導体露光装置を含むインダストリアルグループのトップである武石洋明氏、経理の経験が長いが海外買収企業の社長経験もある浅田稔氏だ。
3人は御手洗氏らより20歳ほど若い。高齢という印象は確実に薄まる。
「これまでどおり実力主義をベースに適材適所で決定した。年齢や属性、人数にこだわったわけではない」。キヤノンは取締役候補についてそう説明する。全体的な視点で会社の経営を考えられる人物を選んだということだ。
キヤノンは10月に「キヤノンEXPO」を控えている。2000年以降、5年おきに東京やニューヨーク、パリなど各国主要都市で開催してきた大規模な展示会だ。キヤノングループの未来に向けた方向性を押し出すイベントとなっている。
新型コロナの影響が残る今年は横浜会場のみでの開催。しかも実施は8年ぶりだ。その場で御手洗氏が語り、グループ各社が見せる「キヤノンの未来」とは。新たな取締役人事とともに、その内容から目が離せない。
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