奇点汽車は2014年に創業し、当初は「造車新勢力(完成車メーカーへの新規参入組)」と呼ばれる新興EVメーカーの先頭集団の一角だった。
2018年4月には、第1号モデル「iS6」の量産を近く開始すると発表。この時期までに量産計画の発表にこぎ着けていた新興EVメーカーは、蔚来汽車(NIO)、小鵬汽車(シャオペン)、威馬汽車(WMモーター)くらいしかなかった。
ところが、他の新興EVメーカーが2019年以降に続々と量産を開始したのとは対照的に、奇点汽車は手形の不渡りを繰り返し、賃金の未払いや債務不履行などの窮状が露呈。投資家の信頼を失い、経営立て直しの機会を逸してしまった。
日本の伊藤忠商事も出資
奇点汽車はどこで躓いたのか。「造車新勢力」は2016年から2018年にかけて、中国の地方政府やベンチャー投資家の熱い期待を集めていた。
安徽省銅陵市、江蘇省蘇州市相城区、湖南省株洲市などが奇点汽車の工場誘致を競うなか、同社は8回の資金調達ラウンドを通じて総額170億元(約3415億円)の投資を集めたと発表。出資者のリストには地方政府系の投資会社のほか、アメリカのインテル・キャピタルや日本の伊藤忠商事の名前もあった。
しかし財新記者の取材によれば、上記のうち実際に払い込まれた金額は3分の1未満の50億元(約1004億円)に過ぎなかった模様だ。量産を実現した他の新興EVメーカーの資金調達額に比べて著しく少なく、奇点汽車の事業計画が早期から問題を抱えていたことを示唆する。
(財新記者:謝韞力、戚展寧)
※原文の配信は8月23日
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