中国の自動車業界内でPHVへの期待が高まっている背景には、中国政府が新エネルギー車の普及促進のために支給していた補助金が、2022年末をもって打ち切られたことがある。この補助金のおかげで消費者のEV購入ブームに火が付き、中国の新エネルギー車の関連産業は急成長を遂げた。
しかし補助金が廃止された今も、新エネルギー車メーカーの大半の経営は赤字だ。EVはコストの高い車載電池を大量に搭載する必要があるため、価格競争力の面で(PHVやエンジン車に対して)どうしても不利になる。現時点までに黒字化を達成したBYDと(新興EVメーカーの)理想汽車の2社が、いずれもPHVに強みを持つことは、その象徴と言えそうだ。
(訳注:理想汽車は発電専用のエンジンを搭載する「レンジエクステンダー型」のEVを主力にしている。中国政府の区分ではPHVの一種と見なされている)
電池大手CATLの成長に影響も
BYDはEVとPHVを同時に製造・販売しており、両者の相乗効果によってエンジン車の市場シェアを奪取している。同社の1月から7月までの新エネルギー車販売台数は、PHVの好調を追い風に前年同期比88.6%増加。これは新エネルギー車市場全体の成長率の2倍以上だ。
一方、中国の車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)にとって、BYDの躍進は朗報とは言えない。BYDはもともと電池メーカーであり、車載電池をすべて内製している。そのため、BYD製のEVやPHVが売れれば売れるほど、CATLの市場シェアは下がってしまう。
しかもBYDは、EVよりも電池搭載量が少ないPHVの拡販に舵を切り、競合メーカーも追随の動きを見せている。
冒頭の海豹を例に取ると、EV版の電池容量が最小でも61.4KWh(キロワット時)であるのに対し、PHV版は3分の1未満の17.6KWhだ。新エネルギー車市場におけるPHVの比率がさらに高まれば、CATLの成長余地が狭まる可能性が否定できない。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は8月27日
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