三井住友海上側がビッグモーターに対して、条件次第では「これ以上不正請求を深くは追及しないと耳打ちしているようだ。このままでは(自賠責の契約が奪われる)厳しい状況だ」という趣旨の発言が、中村専務からあったようだ。
つまり、競合他社が不正請求にいち早く目をつぶる姿勢を示し、契約を奪いに来ようとしているのであれば、自分たちも同様に目をつぶり、先手を打つように入庫誘導を再開して契約シェアを守るべきという議論の流れを暗につくったわけだ。
三井住友海上は本当に契約を奪おうとしたのか
ただ三井住友海上側が、本当にビッグモーターにおもねるような耳打ちをしたのかは定かではない。三井住友海上は当時、証言内容が改ざんされたことを問題視してビッグモーターに追加調査を求めており、入庫再開にも至っていない。
さらに言えば、同会議の約1カ月前、三井住友海上の舩曵真一郎社長は白川社長とある会合で顔を合わせた際に、「ビッグモーターとは今後まともに付き合うべきではない」とまで言っている。白川社長はその発言を、自分たちをだまそうとしていると受け取ったのだろう。
他社に契約を奪われるくらいなら、いっそのこと不正の隠蔽に加担して売り上げ増につなげたいというよこしまな思いを、会議に出席した役員の多くが抱いてしまう営業優先の組織体質が、損保ジャパンには根強くあるようだ。
そうした経営を左右する重要な判断を、取締役会など正式な会議体で議論せず、関係役員だけを集めた非公式の場で下してしまうことも大きな問題だ。コンプライアンス(法令順守)担当役員を同会議にあえて呼ばなかったことからも、けん制機能が働くことを白川社長らが回避しようとしていたことが伺える。
金融庁は損保ジャパンについて、不正請求をめぐるビッグモーターとの癒着だけでなく、そうした企業統治の機能不全についても問題視しており、立ち入り検査における大きな焦点になる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら