「世界エネルギー地図」の変化は日本再生の大好機 「脱化石」「脱中東」は産業・安全保障にもプラス

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平田:南米はどうなるかというと、ブラジルがお手本で、これもペトロブラスという国営企業が中心となって成長していきました。現在、アフリカやメキシコ湾の深海の掘削を行っているのはほとんどペトロブラスです。当初は、リオデジャネイロ沖の深海を掘るなんてとみなにバカにされていましたが、次々に資源が発見されて成功した。その技術は一番です。バカだと言われてもやり続けることが大切なんですね。

藤沢久美/国内外の投資運用会社勤務、ソフィアバンク代表等を経て、現在、独立シンクタンク・国際社会経済研究所理事長。その間、経済評論家やキャスターとしても活躍。著書に『最高のリーダーは何もしない』等。(撮影:今井康一)

藤沢:先ほど、中東が変わりつつあるというお話でしたが、これまで日本は中東とは良い関係を築いてきましたけれど、日本と中東との関係が悪い方向に向かうことはないのでしょうか。

平田:ある意味、転換期かもしれませんね。カタールの天然ガスは日本の中部電力のサポートがなければ開発できていなかったものですけれども、今回、契約を日本側から打ち切ったわけですね。ウクライナ侵攻の前だったので、カタールとの契約がとても割高に思えたのでしょう。同じように、アブダビも契約が切れているわけです。ですから、今後は、中東のLNGとつながっていた国とはだいぶ関係が薄くなりますね。

日本は再生エネルギーへ向かうべき

藤沢:日本はいまだ化石エネルギーの大部分を中東に依存しているわけですが。

平田:石油のことは日本が一生懸命に開発に関わってきたプロジェクトも多く、私も関わらせていただいたのですが、こうなったら、化石エネルギーはオーストラリア、東南アジア、アメリカなどに絞り、そしてもう再生エネルギーに向かうべきだと思います。

現在のところ、結果として意図せざる「脱中東」がうまくいっているわけですから、ASEAN、オーストラリア、アメリカから買う。それは日本の安全保障にとってもプラスにもなります。中東は大事な地域ですけれども、今後、ウェイトは減っていくでしょう。

また、これから日本は産業の面においても、再エネに関する装置や機器などサプライサイドの技術に投資していくべきでしょう。この点では、中国にだいぶ先行を許していると言わざるをえません。

藤沢:そうすると、エネルギーとのつながりで、世界が縦割りになっていきますね。アフリカと欧州、日本とASEANとオーストラリア、真ん中は中東とロシアと中国と。

平田:それからインドですね。これから市場は成長していきます。中東とインドの関係が深まっていくでしょう。インドと中東は地理的にも近いですから。

藤沢:エネルギーによって世界地図が変わっていくわけですね。

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