池上氏解説「墜落死」のプリゴジンは何者だったか 三角関係のもつれと、敗北に至った背景

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さらに、このワグネルに多額の資金を出資して大きく育て上げた人がいます。それが「大統領の料理長」と呼ばれた実業家のエフゲニー・プリゴジン。今回の武装蜂起の中心人物です。

彼はプーチン大統領と同じレニングラード(現サンクトペテルブルク)の出身。過去には数々の犯罪で9年間刑務所暮らしをし、刑務所を出てから高級レストランを経営するようになり大成功を収めました。ロシアに国賓がやってくると、レストランでその人たちに豪華な食事を提供するので、「大統領の料理長」と呼ばれているのだそうです(『ハイブリッド戦争』廣瀬陽子著より)。

民間軍事会社を使う側の最も大きなメリットは、人件費の節約です。正規軍の兵士には退役後の年金も含め、多額の費用がかかります。雇い兵なら高い報酬を約束しても、全体としては安上がりです。たとえ戦場で死んでも自己責任、国が責任を負うことはありません。国家は関知しないというわけです。

だから本当は北朝鮮から砲弾を買っていても、買っているのはあくまで民間の会社ワグネルであり、「我が国は関知していない」と言い張れます。

ロシアに対して大量に砲弾を売って外貨を稼いでいるとされる北朝鮮。2023年7月23日には、ロシアのショイグ国防相が、国防省としては23年ぶりに北朝鮮入りしました。ウクライナでの戦いに敗北しないため、武器弾薬の協力を依頼しに行ったとみられます。

北朝鮮はもともとソ連から輸入した武器を使っていましたから、ロシア軍が使うものとまったく同じ砲弾や大砲、戦車を大量につくることが可能です。プリゴジンは、国防省がワグネルへの弾薬の供給を怠っていると非難し、対立してきました。

アフリカでもワグネルが悪行三昧

激戦地で戦果をあげると、ワグネルを英雄視するような人も出てきます。ウクライナでロシア正規軍の苦戦が伝えられると、プリゴジンが、ロシア国内の刑務所を回って「志願兵になって任務を終えれば無罪放免になる」とリクルートしている動画がネットに流出しています。

前線に投入された受刑者たちは悲惨です。ワグネルはウクライナ軍の陣地に向けて彼らを突撃させ、ウクライナ軍に砲撃させることでウクライナ軍の潜伏場所を突き止め、そこをロシア軍が砲撃する。つまり受刑者たちはウクライナ軍の在りかを突き止めるエサにされているのです。

人間を人間だと思っていない。ロシアが「ならず者国家」なら、ワグネルは「ならず者集団」です。

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