JR東vs.東急・小田急、通勤で強い会社は? 通勤サービスは関東・関西でどう違うのか
こうした一般的な傾向は、路線の立地条件が変わっていない以上、もちろん今でも残っている。しかし、バブル崩壊後の不況や昨今の少子高齢化による利用客数の伸びの鈍化、あるいは減少といった社会情勢の変化を受け、単に過去の経営方針を墨守していたのでは立ちゆかない状況も生じているのだ。
関東においては、JR東日本が利用客確保を図るため大規模な投資を行い、輸送改善に取り組み始めたことが引き金となった。その影響により、これまでにはあまり「競合関係」が見られなかった区間での競合が、一部で見られるようになったのである。
「湘南新宿ライン」の登場で何が変わったのか
具体的には2001年12月1日に開業した、新しい運転系統である「湘南新宿ライン」が波紋を呼んだ。従来、品川での乗り換えが必要であった東海道本線方面と渋谷、新宿、池袋方面が直結されたこのルートに対し、大きな影響を受けると考えた東急電鉄、小田急電鉄が危機感を覚え、対抗策を打ち出してきたのである。
東急は東横線の渋谷―横浜間という、高収益を上げている区間がダイレクトに湘南新宿ラインと競合した。そこで先手を打って、2001年3月28日より東横線に同社としては初めての特急列車を設定。所要時間を縮め、旅客の流出を防ぐ策に出た。
新宿をターミナルとしている小田急も、直通列車も多い藤沢や、メインラインが直結している小田原との間が、まともに湘南新宿ラインとライバル関係となった。
特に所要時間の面で湘南新宿ラインに対し遜色があった新宿~藤沢間のテコ入れが図られ、2002年3月23日より同区間に、従来の急行より停車駅を減らした「湘南急行」を運転。2004年には、さらに速達化を図った「快速急行」へと発展させ、所要時間では互角としている。
両社の藤沢駅は隣接し通路で結ばれており、訪れてみると、それぞれ自社のエリア内で激しい広告合戦が繰り広げられている光景を目にすることになる。かつての首都圏では、あまりお目に掛からなかったものだ。
小田急は運賃の安さと、始発列車が多く座れることをアピール。藤沢~新宿間の運賃は、ICカード利用の場合、JRの972円に対し小田急586円だ。これに対しJR東日本は、新宿のみならず、2015年3月14日に開業したばかりの上野東京ラインも合わせて、渋谷、池袋、上野へも直通であることを盛んにPRしているのである。
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