大手コンサルが警鐘鳴らす「不祥事」の初動対応 記者会見をぶっつけ本番で行うのは難しい
5日後までの初動対応で、「その後」が変わってくるというわけだ。実際、時間が経つにつれて事案に関する情報が不適切な形で流出したり、騒動が大きくなったりすることは多い。
中古車販売大手ビッグモーターの事件がまさにそうだ。1年以上前から問題に対する指摘があったのに放置してきた。そのツケが今回ってきている。
デロイト トーマツが不祥事対応を本格的に始めたのは2000年代前半。東芝やオリンパスなどの会計不正発覚がきっかけとなり、危機管理への認知が広がった。当時10人程度だった担当者は、現在100人規模を専任で抱えるほどになった。
新設の危機管理センターに所属する人員のうち、公認会計士と再発防止支援などのコンサル経験者がそれぞれ3割を占める。残りの3割ほどは事業会社やメディア、金融庁や証券取引等監視委員会などの政府系機関出身者だ。
デロイト トーマツでは専門部署を新設する前から、年間100件程度の不祥事に関する相談を受けてきた。セクハラが発覚した場合の処分についてなど簡単な相談もあれば、提携先の弁護士事務所などを巻き込んで億円単位の費用がかかるような大きな案件も年に数件あったという。
記者会見の演習まで行う企業は少数
冒頭紹介した上場・非上場企業への調査によれば、過半数の企業が記者会見を想定した演習の必要性を認識し、1割の企業が記者会見の演習を複数回実施している。
会見を開催するタイミングについては、事実確認等の調査がすべて完了し明確な事実に基づいて説明・謝罪の会見を開くという企業は少数派。調査が未了でも会見を行うとする企業が大半だった。
「当社では十分な人員がいたため外部の支援会社を頼ることはなかったが、情報が錯綜する中でメディアとのコミュニケーションに神経を使った。会場の設営から想定問答集の作成までやることは本当に多い」。不祥事会見を経験した、ある企業の広報担当者は当時を振り返る。
不祥事会見はYouTubeなどの動画共有サイトで生配信されることが一般的になった。出席する経営幹部の一挙手一投足が不特定多数の目にさらされ、企業イメージをも左右する。不用意な発言が一人歩きすることも多い。
このような重要性の高い会見をぶっつけ本番で行うのは無理がある。そこで、デロイト トーマツは、担当者による状況の把握から経営幹部の記者会見まで、順を追って実際に演習する「事前トレーニング」を提供している。
「ATMから現金を払い出そうとしたところカードが取り込まれ現金も出てこない」「子会社がサイバー攻撃を受け100GB程度のデータが流出した」など、企業の業態にあわせたケースを想定。経営陣も参加し、長いものでは2日間にわたって演習を行う。
今年1月~7月末の間だけでも、30以上の上場企業が第三者委員会や特別調査委員会などを設置、不正行為に関する原因究明を迫られている。不正・不祥事は他人事ではない。もはやすべての企業が備えるべきリスクだ。
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