シリコンウエハで世界最大級の信越半導体は6月末~7月にフル操業復帰へ【震災関連速報】
信越化学工業は28日、東日本大震災の直後から稼働を停めていた信越半導体白河工場(福島県西白河郡西郷村)を4月20日から一部で操業再開するとともに、6月末~7月には被災前の生産能力に復帰させるとの見通しを発表した。鹿島工場(茨城県神栖市東和田)の塩化ビニール樹脂プラントは4月28日から一部で操業を再開し、5月末に本格稼働を目指す。主力2工場の復旧にようやくメドが立ってきた。
白河工場は信越化が直径300ミリのシリコンウエハで主力とする生産拠点。ウエハの材料となる単結晶(インゴット)も手掛けている。白河工場の詳しい生産能力について信越化は明らかにしていないが、グループ全体で月産100万~110万枚(300ミリウエハ)とされる信越化の生産能力の半分以上は占めているとみられる。白河工場からは、主に日本やアジアの半導体メーカーへ供給しているようだ。
白河工場は「1000ガルの加速度の揺れを受け、内部のクリーンルームや装置が損傷した。一方で、建物はまったく無傷でガラス1枚割れなかった」(秋谷文男副社長)という。3月11日の震災直後に起きた東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、3月21日までは復旧作業ができない状態だったが、3月22日から急ピッチで作業を進めている。
信越化学は半導体シリコンウエハの世界市場で3割程度のシェアを持つ。その主力工場が停止している事態をざっと見積もると、少なくとも世界の1~2割程度の半導体シリコンウエハが、1カ月以上にわたって生産できていない状態にあった。一部で稼働再開しても低稼働状態のままだと、電気製品や自動車など半導体を用いるさまざまな工業製品に関連する産業や企業への悪影響が及ぶ可能性があるが、「ユーザーの在庫もあり、デバイスメーカーが大きく穴を空ける事態は短期的にはまずないだろう」と轟正彦常務は説明する。「今後はデバイスメーカーが不測の事態に備えて在庫を積み増す可能性がある」(轟常務)。
鹿島工場の塩ビ樹脂プラントは4月28日から原料在庫を使って一部生産を再開した。原料の調達先である三菱化学の鹿島事業所が5月20日をメドに稼働を再開する見込みとなったことに併せ、5月末に本格稼働する計画だ。鹿島工場では光ファイバー用部材のプリフォームもつくっているが、4月18日から部分的に操業を再開した。塩ビ樹脂、プリフォームともにコンビナート全体の復旧に合わせて本格的な操業再開を目指す。
(武政 秀明 =東洋経済オンライン)
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