急激なドル高で失われる米輸出企業の雇用 鉄鋼や機械などメーカーがレイオフ連発
[ワシントン 8日 ロイター] - 急激なドル高が米国の輸出セクターに打撃を与え、鉄鋼や機械などあらゆるメーカーがレイオフを余儀なくされている。米国内総生産(GDP)に占める輸出の比率は約12.5%で、2007─09年の景気後退からの回復を先導する役割を果たした。
これに対して米連邦準備理事会(FRB)が利上げ開始に動こうかという中で輸出セクターの雇用が減少する今の事態は、経済成長の先行き懸念を生み出している。
ロイターが8日発表された4月米雇用統計を基に分析したところでは、農業を除く上位10の輸出産業は過去3カ月間で雇用が1700人減少した。残りのセクターは同じ期間に雇用が増えた。
ドルは昨年6月以降、主要通貨に対しておよそ20%上昇。これが飲料大手ペプシコ<PEP.N>や日用品大手コルゲート・パルモリブ<CL.N>をはじめとして米企業の第1・四半期利益を圧迫した。
鉄鋼大手USスチール<X.N>の場合は、ドル高で欧州向け販売部門の利益が落ち込んだほか、韓国勢の製品に対する競争力が下がり、今年これまでに米国内で2800人の人員を削減せざるを得なくなった。
USスチールはアラバマ州で自動車や家電、石油業界向けに製品を供給する工場の操業を休止しており、米国鉄鋼労組アラバマ州支部の責任者、デービッド・クラーク氏は「ここでは人員縮小が始まっている」と語った。
クラーク氏など約9000人の労働者が、レイオフされる可能性があるとの通知を受け取ったという。
主力輸出産業は4月に前年同月比で1万1000人の雇用を増やしたものの、前月比では300人増にとどまった。また3カ月単位で雇用が減ったのは、2013年の夏以来だった。
米労働省によると、主力輸出産業の1つである鉄鋼を含めた主要金属生産者は年初来で雇用が1800人減少している。
同じく主力輸出産業の機械生産業は1万0900人減で、4月だけで5200人減った。
ドル高は、FRBが利上げを示唆したことで拍車がかかった。とはいえ、ドル高の悪影響が政策担当者の想定よりも大きくなってしまうというのは、米経済にとって1つのリスク要因だ。実際、第1・四半期の成長率がほぼゼロにとどまったのは、輸出の急減と輸入の急増による面もあった。
元FRBエコノミストで現在はJPモルガンで働くジェス・エドガートン氏の分析では、ドル高が輸出の足を引っ張る度合いは、過去に比べて大きくなっている。同氏は、その理由ははっきりしないとしながらも、最近の西海岸の港湾労働者によるストライキや原油価格急落による石油産業の減速も輸出を圧迫した、と付け加えた。
(Jason Lange記者)
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