優等列車・各停「同じ時間で行ける駅」距離の差は? 首都圏の私鉄・JR各線調査、大差のつく路線も

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JR常磐線

常磐線は快速が時速120km、特快は130kmで運転する区間があり、首都圏でも運転速度の速い路線だ。北千住を基準にした場合、各停だと柏(10駅目)の1つ手前、南柏(19.4km)まで26分。一方、快速は各停の駅数でいえば13駅目(快速線では4駅目)の天王台(28.8km)まで25分、特快はその隣の取手(32.2km)まで24分だ。具体例でいうと、日中毎時16分北千住発の各停が南柏に着くのは41分。その3分前の13分に発車した快速はその頃終点・取手(42分着)の手前だ。

だが、実は各停もけっこう速い。上記の区間の表定速度は44.7km。本記事で取り上げた路線・区間でいうと小田急線の急行や東横線の相鉄直通急行を上回る。北千住―取手間の平均駅間距離は2.3kmである。同線は複々線で同じ線路上での追い越しがないため、快速・各停がお互いに影響を受けないほか、各停の電車の加速性能が地下鉄区間に合わせて高めに設定されているという特徴がある。

各停と優等列車「到達距離の差」は何倍?

さて、ここでこれまで挙げた各線・各区間について、同じ所要時間で優等列車が各停の何倍の距離を走っているのか、「到達距離倍率」をまとめてみた。

小田急線 急行:1.66倍 快速急行:2.17倍
京王線 特急・区間急行(笹塚乗り継ぎ)1.37倍 (調布乗り継ぎ)1.84倍 京王ライナー:2.41倍
京急線 特急:3.08倍
東急東横線 急行:1.38倍 相鉄直通急行:1.11倍 特急:1.48倍
東急田園都市線 急行:1.57倍
中央線快速 特快:1.13倍(土休日快速:1.13倍)
常磐線 快速:1.48倍 特快:1.66倍

いかがだったであろうか。比較してみると、京急の特急や京王ライナーは各停と比べた場合の速さが突出している一方、東横線の相鉄直通急行は大差なかったり、中央線の特快は土休日の快速と変わらなかったりすることがわかる。

一部の例外や、都心からの距離によっても多少の違いはあるにせよ、「到達距離倍率」でいうと1.5倍あたりが各停と優等列車の利便性のバランスが取れているといえるのではないかと筆者は考える。1.5倍から下に行くほど快速・急行利用者が割を食い(待避できる駅が少ない・列車が詰まるなど)、1.5倍から上に行くほど各駅停車利用者が割を食う(待避時間のほか、駅間距離が短く駅数が多いなど)と言えそうだ。

都心に近い駅は便利そうだが、実は急行や快速でやや離れた郊外に行ったほうが時間的には早いこともある。「各停と急行の到達距離の差」、これからどこの沿線に住むか考える1つの要素に加えていただければ幸いである。

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北村 幸太郎 鉄道ジャーナリスト

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きたむら こうたろう / Koutaro Kitamura

1989年東京生まれ。2008年昭和鉄道高等学校運輸科卒業、2012年日本大学理工学部社会交通工学科マネジメントコース卒業。乗り鉄、ダイヤ鉄。学生時代は株式会社ライトレールにインターン生として同社の阿部等社長のもと、同社主催の「交通ビジネス塾」運営などに参加。

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