日本では忘れられているが、2023年は日中平和友好条約締結45周年だ。当時を振り返り興味深いのは、条約締結時の交渉の焦点だ。「覇権主義に反対」の一文を入れたいという中国の要求に日本は抵抗した。ソ連敵視と捉えられることへの警戒からだ。冷戦下のアメリカは中国に同調した。
中国は「ソ連を名指ししない」と日本の説得を試みた。しかし日本の腰は重い。しびれを切らした鄧小平は「どの国であれ覇権主義はダメなのだ」と一般論で迫った。日中の攻防から伝わるのは、日本の政治家の慎重さと老獪さだ。
アメリカ一辺倒で大丈夫か
もし彼らが現在の日本外交を見たら、きっと腰を抜かすほど驚いただろう。単に「時代が違う」という話では済まない「軽率さ」に彩られているからだ。アメリカを絶対視し日本の姿勢は大きく傾いた。
尖閣諸島の領有権をめぐり中国と対峙し、そこにアメリカを巻き込むことに腐心して、「やっとアメリカが本気で中国を……」とはしゃぐ気持ちはわかる。だがアメリカの存在を心強く思うことと複数の選択肢を視野に入れる外交の知恵とは別物だ。日米の利害は必ずしも一致していないし、アメリカの対外戦略もつねに成功してきたわけではない。
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