福島原発事故で生じた処理水の海洋放出問題で、日中関係が緊張し始めた。
2023年7月4日には国際原子力機関(IAEA)が、2年間の検証を踏まえて海洋放出に問題なしという報告書を日本政府に提出。だが同日、中国の呉江浩駐日大使が記者会見を開き、「日本の処理システムの有効性と持続可能性には権威ある十分な検証がなされていない」と批判、海洋放出の中止を求めた。
さらに翌日には中国外交部が輸入水産品の検査強化を表明。8日には香港政府の環境・生態局長が「大公報」紙に寄稿し、日本からの食品輸入の規制強化を唱えた。体調不良の秦剛外相に代わり、格上の王毅政治局員が参加するASEAN地域フォーラムでも、中国は議長声明に日本批判を盛り込むよう働きかけているようだ。
福島第一原発の冷却水は、放射性物質の除去処理が施され、現在の技術で取り除けないトリチウムだけを残してタンクに貯蔵されている。放射能は自然界にもあり、トリチウムを含む処理水の海洋放出は、中国など各国の原発も日常的に行っている。福島でも同様に処理水を希釈して海洋放出し、原発の廃炉を進めたい、というのが日本政府の考えだ。
中国はゴールポストを動かした
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